使用用途別に変わる配管の注意点
- Yusuke Yoshihara
- 5月5日
- 読了時間: 4分
はじめに
配管保全をしていると、同じような太さ・素材の配管でも、「こっちは壊れやすい」「あっちは長持ちしてる」というケースに出会うことがあります。
実はそれ、“流しているもの”の違いが大きなポイント。
この記事では、蒸気・水・空気・薬液など、使用用途による配管の特徴の違いと、それでも共通して注意すべき保全の着眼点をわかりやすく整理します。
目次
1. なぜ「流体の種類」で配管が変わるのか?
2. 蒸気配管の特徴と注意点(熱と膨張)
3. 水・空気配管の特徴と注意点(圧力・キャビテーション)
4. 薬液配管の特徴と注意点(腐食・漏洩リスク)
5. 用途が違っても「共通して見るべき」保全ポイント
1. なぜ「流体の種類」で配管が変わるのか?
配管は単なる「管」ではなく、中を流れるものの特性に合わせて最適化された設計がされています。
温度が高い → 熱に強く膨張に耐える構造
流体が腐食性 → 腐食しにくい素材選び
高速で流れる → キャビテーションや摩耗への対策
圧力が高い → 継手や支持構造を強化
🔍 このように、「何を流すか」は配管の寿命や保全方針に直結します。
2. 蒸気配管の特徴と注意点(熱と膨張)
🔥 蒸気配管の主な課題:
高温(100℃〜300℃超)
熱膨張による伸び・曲がり
断熱材の劣化
ドレン(水)のたまりと水撃(ウォーターハンマー)
🔧 保全上のポイント:
熱膨張対策として、ループやスライド支持金具を設けることが多い
ドレン抜きのトラップや傾斜配管が設計されている → 逆勾配になると詰まりや腐食の原因に
断熱材の破れ・湿気吸収 → 保温性能が落ちて結露やサビの原因に
📌 式メモ:熱膨張の長さ変化
ΔL=α⋅L0⋅ΔT
(α:線膨張係数, L0:初期長さ, ΔT:温度変化)
3. 水・空気配管の特徴と注意点(圧力・キャビテーション)
💧 水・空気配管の課題:
圧力変動と振動・衝撃
キャビテーション(高速流・圧力低下で発生)
結露・凍結
錆やスケールによる流路の狭まり
🚨 キャビテーションって?
圧力が一気に下がることで液体中に気泡(空洞)が発生→つぶれるときに衝撃波が出る現象。→ 内壁に小さな穴(ピッティング)を開ける原因に。
🛠 保全の着眼点:
流速や圧力差が大きくなる箇所(バルブ下流、曲がり部)を重点チェック
配管内部の汚れ(スケール・サビ)蓄積は配管の“音”や圧力で判断
冬期は断熱と水抜きを忘れずに
4. 薬液配管の特徴と注意点(腐食・漏洩リスク)
🧪 薬液は種類が多く、一律の対処ができないのが難点。
酸性/アルカリ性/溶剤/可燃性 etc.
金属腐食・樹脂膨潤・シール材劣化など、相性によって不具合パターンが異なる
🚨 よくあるトラブル:
材質選定ミス → 配管が数ヶ月で劣化・漏洩
バルブやパッキンのゴム材が薬液に侵されて硬化・変形
清掃時に別薬剤を流して化学反応が起きるケースも
⚠️ 保全の着眼点:
材料証明・適合表のチェックが必須(SUS304/316L/PTFEなど)
保温材の化学耐性も重要(吸収→腐食の例あり)
目視できるような点検口や色分け配管も有効
📌 材料の選定には、腐食の電位差を意識したガルバニックシリーズの知識が役立ちます。
5. 用途が違っても「共通して見るべき」保全ポイント
🔎 どの用途であっても、以下は必ずチェックすべき共通点です:
✅ 配管保全の共通着眼点
境界部(継手、フランジ、バルブまわり)
曲がり・支持部(応力集中と摩耗)
振動・騒音の兆候(内部異常のサイン)
温度・圧力のモニタリング(通常範囲の把握)
色・におい・湿気による「五感点検」も重要
🧠 異常は「流れるモノ」より、「変化する条件」で判断する方が見つけやすいです。
まとめ
📌 この記事の要点
配管は“流すモノによって”設計も弱点も変わる
蒸気は熱膨張/水・空気はキャビテーション/薬液は腐食がポイント
でも、どんな用途でも「境目・曲がり・支持部」は共通の点検ポイント!
🛠️ 明日からできること
保温・支持具・継手まわりを用途に応じて見直す
材質適合・流体条件の見える化を進める
配管-No.3
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