揺れやすい配管の正体とは?──“固有振動数”とモード形状の基本を押さえる
- Yusuke Yoshihara
- 5月15日
- 読了時間: 4分
はじめに
設備を点検していて、「似たような長さなのに、こっちの配管だけ妙に揺れる」という経験、ありませんか?
その“揺れやすさ”の正体は、ズバリ「固有振動数とモード形状」にあります。
構造物には、振動しやすい特有の“リズム”があり、その周波数に近い刺激があると、少しの入力でも大きな揺れになります。
この記事では、
固有振動数って何?
モード形状ってどう見るの?
配管のどこが揺れやすい?
現場でできる調べ方は?という疑問に、数式と図解+現場知識でしっかり答えます。
目次
1. 固有振動数とは?構造に“備わっている”揺れの周波数
2. 配管が揺れる“モード形状”とは何か?
3. 配管の揺れやすさを決める5つの要因
4. 固有振動数の近似計算と実測方法
5. 固有振動数を知って得すること
1. 固有振動数とは?
構造に“備わっている”揺れの周波数
物体には、その構造・材質・質量によって、外から力を加えなくても「自然と揺れたくなる周波数」があります。これが 固有振動数(固有周期)です。
⚙ 数式で見る:1自由度系の固有振動数

f0:固有振動数(Hz)
k:剛性(N/m)
m:質量(kg)
そうです,前回もこれ「だけ」は頭の片隅に残してください,と言ったあの式です。
剛性が大きい ⇒ 高周波
質量が大きい ⇒ 低周波
つまり、「やわらかくて軽い構造」ほど高く揺れる、「重くてしっかりした構造」ほど低く揺れる。
2. 配管が揺れる“変形モード”とは?
変形モードとは、ある固有振動数で揺れるときの“変形のパターン”のことです。
📉 図でイメージ:
例:両端支持単純梁(配管の一般的な直管部)
第1モード:中央が大きく揺れる(一番揺れやすい)
第2モード:2か所で山、中央で節点(あまり起きにくい)
第3モード:3か所で山(より高い周波数)
振動計でよく見えるのは第1モード(最も低い固有振動数)です。
3. 配管の揺れやすさを決める5つの要因
以下のような設計要素が、“揺れやすさ”=固有振動数の低さに直結します:
要因 | 説明 | 揺れへの影響 |
配管の長さ | 長いほど剛性が下がる | 低くなる(揺れやすく) |
肉厚 | 厚いほど剛性が上がる | 高くなる(揺れにくく) |
材質 | 鋼よりSUS、SUSより樹脂は柔らかい | 柔らかいほど低くなる |
支持点の位置と間隔 | 支持間が広いほど“たわみ”やすい | 中間で揺れる |
接続機器の重さ | バルブやモーターで質量が増す | 低くなる |
✅ 現場での“危険な設計例”
長くて中間支持のない蒸気ライン
先端にアクチュエータが載った細い配管
脚がグラつく配管ラック(架台)
4. 固有振動数の近似計算と実測方法
🔢 簡易計算:単純梁モデルでの推定
梁(L:長さ、E:ヤング率、I:断面2次モーメント、m:質量、λ:支持係数)では、

fn:固有振動数(Hz)
L:長さ(mm)
E:ヤング率(MPa)
I:断面2次モーメント(mm4)
ρ:密度(ton/mm3)
A:断面積(mm2)
λ:支持係数
ここで見るべきは,固有振動数を変えるにはなんのパラメータを操作するか?です。
長さの2乗に反比例(少し長くなるだけで急激に下がる)
材質(E)と断面(I)も影響する(しかし長さより影響は少ない)
🧪 現場での測定方法
ハンマリングテスト(叩いて反応を見る)
加速度センサーを使った周波数解析(FFT)
モーダル解析装置(高精度)
🎯 Tip:簡易センサ(スマホアプリなど)でも意外と見える!
5. 固有振動数を知って得すること
✅ 1. 共振回避の設計ができる
使用するモーターの回転数(周波数)と配管の固有振動数が近ければアウト
設計時に解析して「ぶつからないように」するのが重要!
✅ 2. 揺れやすい場所を事前に察知できる
固有振動数が極端に低い部分は、揺れやすい ⇒ 点検強化
破損・緩み・腐食などで、固有振動数が“変化する”のもヒント
✅ 3. “目に見えない変化”を見える化できる
支持の脱落や、配管のたわみを「数字で確認」できる
点検の精度が格段にアップ!
まとめ
配管が“なぜ揺れやすいのか?”は、その構造に固有の「振動のクセ」=固有振動数に理由があります。
🔑 本記事の要点:
固有振動数とは構造固有の揺れの周波数であり、小さな力でも共振が起きうる
変形モードによって、どこが・どう揺れるかが決まる
揺れやすさは「長さ・材質・断面形状」でコントロール可能
固有振動数を知ることで、共振予防・故障予測が可能になる
振動-No.4
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