「過去と比べて見えるもの」傾向管理と“違和感の可視化”
- Yusuke Yoshihara
- 7月30日
- 読了時間: 4分
はじめに
振動測定の結果を1回だけ見ても、「異常かどうか」の判断は難しい場合があります。正常に見えても、それが「いつも通り」なのか、「最近になって悪くなった」のかが分からなければ、的確な判断にはつながりません。
そこで力を発揮するのが、傾向管理(トレンド監視)です。SOMPIPEには、スマホで測った振動を記録・比較・蓄積できるログ機能を開発中です。
今回は、傾向管理の基本的な考え方と、SOMPIPEのログ機能を活用するコツについて解説します。
目次
「傾向管理」って何のためにやるの?
SOMPIPEのログ機能でできること
“違和感”を見える化する3つの視点
実例:こうして見つけた「壊れる前のサイン」
記録が“属人化”を防ぐ
傾向が見えると判断が変わる1. 「傾向管理」って何のためにやるの?
傾向管理とは、ざっくり言えば:
「いつもの状態」を把握して、変化が起きたら気づけるようにすること
です。
たとえば、毎月点検しているポンプの振動が「毎回0.8 mm/s前後」で安定していたのに、ある日1.6 mm/sに上がっていたとします。この変化が「正常範囲だけど、何かおかしい」と判断できるのが傾向管理の力です。
📌 ポイントは、「絶対値」ではなく「相対変化」を見ること。
2. SOMPIPEのログ機能でできること
SOMPIPEでは、ログ機能を使うと以下が可能になります。
※現在,開発中で近日実装予定。
✅ 測定履歴を保存・呼び出し
測定した日付・設備名・部位を入力して記録
過去のグラフ(波形・変位)と数値を一覧表示
✅ 同じ設備の「時系列グラフ」表示
加速度・変位の推移が見える
増加傾向があれば一目で分かる
✅ メモ・タグで管理
例えば「メンテナンス直後」「高負荷時」などの状況を記録
状況と振動の関係をあとから確認できる
これにより、「今どうか?」だけでなく、「以前と比べてどうか?」が判断できるようになります。
3. “違和感”を見える化する3つの視点
では、ログを活用して“異常の兆し”を早めに捉えるには、どこを見ればいいのでしょうか?現場でよく使われる、シンプルな3つの視点があります。
① 「レベルが上がってきている」か?
数値(RMS)が少しずつ上がっている場合、異常の前触れであることが多いです。
特に、1.2倍〜1.5倍に増えていたら要注意。
② 「ピークが変わってきている」か?
変位のピーク周波数が変わったり、高周波が増えていたら注意。
新しい傷や摩耗が出ている可能性があります。
③ 「波形が荒れてきている」か?
以前は滑らかだった波形に、「ドン」とした衝撃が混じり始めたら、構造の劣化や損傷のサインかもしれません。
4. 実例:こうして見つけた「壊れる前のサイン」
ある工場では、ポンプの軸受に不具合が出る数週間前、SOMPIPEで記録していた振動値が以下のように変化していました。
日付 | 速度振動RMS (mm/s) | 備考 |
6月5日 | 0.72 | 通常運転中 |
6月15日 | 1.05 | 特に問題なし |
6月25日 | 1.52 | 若干異音発生 |
7月2日 | 2.48 | 点検したらグリス切れ+摩耗発見 |
もし6月15日の時点でログを見て、「あれ?ちょっと上がってるな」と気づけていれば、潤滑処理だけで済んだかもしれません。
5. 記録が“属人化”を防ぐ
もうひとつ、ログ管理の大きなメリットは:
「あの人しか知らない」状態から、「誰でも見てわかる」状態に変えられること
です。
振動の異変にいち早く気づけるベテランの感覚は貴重ですが、それが記録されていないと、異動や退職とともに失われます。SOMPIPEの履歴機能を使えば、感覚的な「違和感」も可視化・共有化することが可能になります。
📌 点検を「一人の目」から「チームの記録」にする。これが、現場の保全力を底上げする第一歩です。
6. 傾向が見えると判断が変わる
たとえば、次のような判断も、傾向が見えていれば変わってきます。
数値が「基準値以下」でも:以前より明らかに上がっていれば対策を検討
波形が「パッと見きれい」でも:FFTで新しいピークが立っていれば注意
「判断に迷うとき」でも:ログを見れば変化の傾向が判断材料になる
つまり、傾向を見ることで、判断の“根拠”が持てるようになるのです。
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