測定技術

過去と比べて見えるもの傾向管理と違和感の可視化

Wed Jul 30

はじめに

振動測定の結果を1回だけ見ても、「異常かどうか」の判断は難しい場合があります。正常に見えても、それが「いつも通り」なのか、「最近になって悪くなった」のかが分からなければ、的確な判断にはつながりません。

そこで力を発揮するのが、傾向管理(トレンド監視)です。SOMPIPEには、スマホで測った振動を記録・比較・蓄積できるログ機能を開発中です。

今回は、傾向管理の基本的な考え方と、SOMPIPEのログ機能を活用するコツについて解説します。

1. 「傾向管理」って何のためにやるの?

傾向管理とは、ざっくり言えば:

> 「いつもの状態」を把握して、変化が起きたら気づけるようにすること

です。

たとえば、毎月点検しているポンプの振動が「毎回0.8 mm/s前後」で安定していたのに、ある日1.6 mm/sに上がっていたとします。この変化が「正常範囲だけど、何かおかしい」と判断できるのが傾向管理の力です。

📌 ポイントは、「絶対値」ではなく「相対変化」を見ること。

2. SOMPIPEのログ機能でできること

SOMPIPEでは、ログ機能を使うと以下が可能になります。

※現在、開発中で近日実装予定。

✅ 測定履歴を保存・呼び出し

  • 測定した日付・設備名・部位を入力して記録
  • 過去のグラフ(波形・変位)と数値を一覧表示

✅ 同じ設備の「時系列グラフ」表示

  • 加速度・変位の推移が見える
  • 増加傾向があれば一目で分かる

✅ メモ・タグで管理

  • 例えば「メンテナンス直後」「高負荷時」などの状況を記録
  • 状況と振動の関係をあとから確認できる

これにより、「今どうか?」だけでなく、「以前と比べてどうか?」が判断できるようになります。

3. "違和感"を見える化する3つの視点

では、ログを活用して"異常の兆し"を早めに捉えるには、どこを見ればいいのでしょうか?現場でよく使われる、シンプルな3つの視点があります。

① 「レベルが上がってきている」か?

  • 数値(RMS)が少しずつ上がっている場合、異常の前触れであることが多いです。
  • 特に、1.2倍〜1.5倍に増えていたら要注意。

② 「ピークが変わってきている」か?

  • 変位のピーク周波数が変わったり、高周波が増えていたら注意。
  • 新しい傷や摩耗が出ている可能性があります。

③ 「波形が荒れてきている」か?

  • 以前は滑らかだった波形に、「ドン」とした衝撃が混じり始めたら、構造の劣化や損傷のサインかもしれません。

4. 実例:こうして見つけた「壊れる前のサイン」

ある工場では、ポンプの軸受に不具合が出る数週間前、SOMPIPEで記録していた振動値が以下のように変化していました。

日付速度振動RMS (mm/s)備考
6月5日0.72通常運転中
6月15日1.05特に問題なし
6月25日1.52若干異音発生
7月2日2.48点検したらグリス切れ+摩耗発見

もし6月15日の時点でログを見て、「あれ?ちょっと上がってるな」と気づけていれば、潤滑処理だけで済んだかもしれません。

5. 記録が"属人化"を防ぐ

もうひとつ、ログ管理の大きなメリットは:

> 「あの人しか知らない」状態から、「誰でも見てわかる」状態に変えられること

です。

振動の異変にいち早く気づけるベテランの感覚は貴重ですが、それが記録されていないと、異動や退職とともに失われます。SOMPIPEの履歴機能を使えば、感覚的な「違和感」も可視化・共有化することが可能になります。

📌 点検を「一人の目」から「チームの記録」にする。これが、現場の保全力を底上げする第一歩です。

6. 傾向が見えると判断が変わる

たとえば、次のような判断も、傾向が見えていれば変わってきます。

  • 数値が「基準値以下」でも:以前より明らかに上がっていれば対策を検討
  • 波形が「パッと見きれい」でも:FFTで新しいピークが立っていれば注意
  • 「判断に迷うとき」でも:ログを見れば変化の傾向が判断材料になる

つまり、傾向を見ることで、判断の"根拠"が持てるようになるのです。

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