振動の話

固有振動数を自分で計算してみよう:簡易式とExcel活用法

Thu Feb 19

固有振動数を自分で計算してみよう:簡易式とExcel活用法

はじめに

「この配管、運転したら揺れるかな?」——設計段階や改造時に、こんな不安を感じたことはありませんか?

配管が揺れやすいかどうかは、「固有振動数」を計算することで、ある程度予測できます。ポンプやコンプレッサーの回転数と固有振動数が近いと共振が起き、想定外の大きな振動が発生するリスクがあります。

本格的な解析ソフトを使わなくても、簡易式とExcelがあれば、おおよその固有振動数は計算可能です。精度は完璧ではありませんが、「危険な領域に入っていないか」をチェックするスクリーニングとしては十分に実用的です。

この記事は、配管設計者・保全技術者・プラントエンジニアの方に向けて書かれています。

💡 この記事で得られること

  • 配管の固有振動数を簡易式で計算する方法
  • Excelを使った実際の計算手順(数値例つき)
  • 支持位置や配管径を変えたときの影響の見方

1. 固有振動数とは何か──配管の「揺れやすさ」を数値化する

1.1 固有振動数の定義

固有振動数とは、物体が外力なしに自由に振動するときの周波数です。配管で言えば、「ポンと叩いたときに、配管が自然に揺れる周波数」がこれにあたります。

イメージ: 公園のブランコを想像してください。ブランコには「ちょうど良い揺らし方」があります。そのタイミング(周期)がブランコの固有振動数です。配管も同じで、「揺れやすい周波数」が存在します。

1.2 なぜ固有振動数を知る必要があるのか

ポンプの回転数が900 rpm(毎秒15回転)で運転されているとき、15 Hzの振動が配管に伝わります。一方、配管の固有振動数を計算すると14.8 Hzだったとしましょう。

この場合、励振周波数(15 Hz)と固有振動数(14.8 Hz)がほぼ一致しているため、共振が発生します。最初は小さな振動でも、時間とともに振幅が大きくなり、金属疲労が蓄積して亀裂→破断に至るリスクが高まります。

だからこそ:

  1. 設計段階で固有振動数を計算
  2. 機械の励振周波数と比較
  3. 共振リスクを事前評価

このプロセスが重要です。

1.3 簡易計算の位置づけ

方法精度所要時間コスト用途
簡易式(本記事)±20~30%数分~数十分無料スクリーニング、初期検討
有限要素法(FEM)±5~10%数日~数週間数十万円~詳細設計、最終確認
実測高精度数時間数万円~既設配管の確認

簡易計算の役割:「危険な領域にいるかどうか」の判断、FEM解析が必要かどうかの判断、支持位置の初期検討。完璧な精度は求めず、「おおよその目安」として活用します。

2. 簡易計算の基本式──片持ち梁と両端支持梁

2.1 配管を梁としてモデル化する

支持条件による分類:

  • A. 両端支持梁: 両端にサポートがある配管(一般的な配管スパン)
  • B. 片持ち梁: 一端が固定、他端が自由(計装配管、小口径枝管など)
  • C. 片端支持・片端ガイド: より複雑な支持条件(簡易式では扱わない、FEM推奨)

本記事ではA(両端支持梁)とB(片持ち梁)の2つを扱います。

2.2 両端支持梁の固有振動数(基本式)

fn = (λ² / 2π) × √(EI / mL⁴)

各記号の意味:

  • fn: 固有振動数 [Hz]
  • λ: 境界条件係数(両端単純支持の場合、λ = π)
  • E: ヤング率 [Pa]
  • I: 断面二次モーメント [m⁴]
  • m: 単位長さあたりの質量 [kg/m]
  • L: スパン長さ [m]

実用式:

fn = 15.76 / L² × √(EI / m)  [Hz]

2.3 片持ち梁の固有振動数

fn = 0.56 / L² × √(EI / m)  [Hz]

係数の違い:

  • 両端支持: C ≈ 1.57(= 15.76 / 10)
  • 片持ち: C ≈ 0.56

片持ち梁は、両端支持の約1/3の固有振動数になります(同じ長さの場合)。

2.4 材質別の物性値と計算係数

材質ヤング率 E [GPa]密度 ρ [kg/m³]√(E/ρ)相対値
炭素鋼(STPG)20678501621.00
ステンレス鋼(SUS304)19379301560.96
塩ビ管(HIVP)2.91400450.28
アルミニウム7027001610.99

塩ビ管の固有振動数は炭素鋼の約1/4。温度が上がるとヤング率が低下し、さらに固有振動数が下がる点に注意。

2.5 実用的な簡易式(炭素鋼・両端支持)

fn ≈ 1500 / L² × D  [Hz]
  • L: スパン長さ [m]
  • D: 外径 [mm]

精度は±30%程度。炭素鋼専用。

3. 実際に計算してみよう──Excelでの計算例

3.1 計算条件の設定

例題条件:

項目
配管材質炭素鋼(STPG)
呼び径100A(4インチ相当)
スケジュールSch40
外径(D)114.3 mm = 0.1143 m
肉厚(t)6.02 mm
内径(d)102.26 mm
スパン長さ(L)3.0 m
支持条件両端単純支持
流体水(満液)

物性値:E = 206 GPa、ρ_steel = 7850 kg/m³、ρ_water = 1000 kg/m³

3.2 計算手順

Step 1: 断面積

A_steel = π/4 × (D² - d²) = 0.00204 m²
A_water = π/4 × d² = 0.00821 m²

Step 2: 単位長さあたりの質量

m_pipe  = 0.00204 × 7850 = 16.1 kg/m
m_fluid = 0.00821 × 1000 = 8.21 kg/m
m_total = 16.1 + 8.21 = 24.3 kg/m

Step 3: 断面二次モーメント

I = π/64 × (D⁴ - d⁴) = 3.01 × 10⁻⁶ m⁴

Step 4: 固有振動数

fn = 15.76 / 3.0² × √((206×10⁹ × 3.01×10⁻⁶) / 24.3)
   = 1.751 × 159.8
   ≈ 280 Hz

3.3 Excelのセル配置例

セル項目
B2外径 D [mm](入力)114.3
B3肉厚 t [mm](入力)6.02
B4内径 d [mm]=B2-2*B3102.26
B5スパン L [m](入力)3.0
B7ヤング率 E [GPa](入力)206
B8密度 ρ_steel [kg/m³](入力)7850
B9流体密度 ρ_fluid [kg/m³](入力)1000
B15合計質量 m [kg/m]=B13+B1424.28
B16断面二次モーメント I [m⁴]=PI()/64*((B2/1000)^4-(B4/1000)^4)3.01E-06
B18固有振動数 fn [Hz]=15.76/B5^2SQRT((B710^9*B16)/B15)280

4. パラメータスタディ

4.1 スパン長さの影響(100A炭素鋼、水満液)

スパン L [m]固有振動数 fn [Hz]
1.02,518
2.0630
3.0280
4.0157
5.0101
6.070

固有振動数は L² に反比例。スパンが2倍になると固有振動数は1/4。

4.2 配管径の影響(スパン3.0m、Sch40、水満液)

呼び径外径 D [mm]固有振動数 fn [Hz]
50A60.5130
80A89.1175
100A114.3205
150A165.2265
200A216.3325

小口径配管は固有振動数が低く、共振しやすい。

4.3 流体の影響(100A、3.0m)

流体密度 [kg/m³]固有振動数 fn [Hz]
空気1.2251
1000205
重油900209
水銀1360091

液体満液では固有振動数が20~30%低下。スタートアップ時は空配管→液体充填で急激に下がる点に注意。

4.4 配管材質の影響(100A相当、3.0m、水満液)

材質固有振動数 fn [Hz]
炭素鋼(STPG)205
ステンレス鋼(SUS304)197
塩ビ管(HIVP)56

塩ビ管の固有振動数は炭素鋼の約1/4。共振リスクが非常に高く、支持間隔を1.0~1.5mに短くすることを推奨。

4.5 支持条件の影響(100A、3.0m)

支持条件係数 C固有振動数 fn [Hz]
両端単純支持1.57205
両端固定支持3.56465
片持ち0.5673

実際の配管支持は「完全固定」と「完全自由」の中間。安全側として「両端単純支持」で計算するのが推奨です。

5. 共振回避の判断基準

5.1 励振周波数の特定

励振源励振周波数の計算
ポンプ・電動機f = rpm / 60 [Hz]
往復動圧縮機f = (rpm / 60) × シリンダー数
ベーン通過周波数f = (rpm / 60) × ベーン数

5.2 共振回避の判定基準(API 618準拠)

|fn - f_excitation| / f_excitation ≥ 0.2

固有振動数と励振周波数の差が、励振周波数の20%以上離れていること。

例:励振周波数が30 Hzの場合

  • 許容範囲外(共振リスク): 24 Hz ~ 36 Hz
  • 許容範囲: < 24 Hz または > 36 Hz

5.3 判定フローチャート

【Step 1】配管の固有振動数を計算
   ↓
【Step 2】励振周波数を特定(基本 + 高調波)
   ↓
【Step 3】分離度を計算
   ↓
分離度 ≥ 20% → OK
分離度 < 20% → NG(共振リスクあり)
   ↓
【Step 4】対策検討
  - サポート追加(スパン短縮)
  - サポート位置変更
  - 配管ルート変更
  - 減衰材追加
   ↓
【Step 5】再計算

5.4 対策の効果を計算で確認

例:固有振動数25 Hzの配管(励振30 Hz)→ 分離度17%でNG

対策:スパン中央にサポート追加(6.0 m → 3.0 m × 2スパン)

fn = 1500 / 3.0² × √114.3 ≈ 178 Hz
分離度 = |178 - 30| / 30 = 493% → OK

まとめ

配管の固有振動数は、簡易式とExcelを使えば誰でも計算できます。完璧な精度は期待できませんが、「共振の危険領域にいるかどうか」を判断するスクリーニングとしては十分に実用的です。

📌 この記事のポイント3つ

  1. 固有振動数は fn ∝ 1/L²: スパンが長いほど低周波数で揺れやすい
  2. Excelで基本式を組めば、パラメータ変更の影響をすぐに確認できる
  3. 励振周波数との分離度20%以上を目安に、共振リスクを評価する

💡 明日から現場でできること

  • 既設配管のスパン長さを測定し、固有振動数を概算する
  • ポンプ回転数と比較し、共振リスクの有無を確認する
  • 対策が必要な配管をリストアップし、優先順位をつける
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