SOMEQUIP 開発ストーリー

ISO 20816とは?─SOMEQUIPが採用した国際規格の基礎知識

Fri Mar 20

ISO 20816とは?─SOMEQUIPが採用した国際規格の基礎知識

はじめに

「ISO 20816って、どんな規格なの?」

SOMEQUIPを説明するとき、必ずこの質問が出ます。「国際規格に基づいて判定する」と言うと信頼感が出る一方、「それって何?」という疑問も生まれます。

この記事では、ISO 20816シリーズの概要・採用した理由・ゾーン判定の仕組みを、保全の専門家でなくても理解できるよう解説します。

「基準を知る」ことは、測定結果を正しく使うための第一歩です。

💡 この記事で得られること

  • ISO 20816シリーズとはどんな規格か、その位置づけと構成
  • ゾーン(A〜D)判定のしくみと各ゾーンの意味
  • SOMEQUIPがISO 20816を採用した設計上の理由

1. ISO 20816とは何か

1.1 概要と歴史

ISO 20816は、回転機械の振動測定・評価に関する国際規格です。ISO(国際標準化機構)が策定し、世界中の産業現場で振動管理の共通言語として使われています。

前身はISO 10816シリーズで、2000年代以降に改定・整備が進み、現在のISO 20816シリーズとして体系化されました。日本でもJIS(日本産業規格)に対応版が存在しており、国内外を問わず通用する評価基準です。

1.2 規格の構成(主要パート)

ISO 20816は、機械の種類や規模に応じて複数のパートに分かれています。

パート対象機械
ISO 20816-1評価基準の一般要求事項(すべての機械に共通)
ISO 20816-3産業用機械(ポンプ・コンプレッサー・ファン等)
ISO 20816-5水力発電機械
ISO 20816-7産業用ポンプ(スタンドアロン)
ISO 20816-9機器の現地計測全般

SOMEQUIPは主にISO 20816-1・20816-3を基盤として、対象設備の種別と出力クラスに応じた閾値を適用します。

2. ゾーン評価のしくみ

2.1 評価指標は「振動速度(mm/s RMS)」

ISO 20816が採用している評価指標は、**振動速度(mm/s、RMS値)**です。

「速度」を指標にするのには理由があります。

指標何を表すか特徴
加速度(m/s²)瞬間的な力の変化の大きさ高周波(衝撃)に敏感。設備ダメージの即時評価向き
速度(mm/s)振動の強さ(エネルギー量)周波数に依存しにくく、設備への疲労影響を総合的に表す
変位(μm)振幅の大きさ(揺れの幅)低周波に敏感。配管・構造物の評価向き(SwRI等で使用)

速度(mm/s)は「設備がどれだけ激しく振動しているか」を、周波数によらず安定して表現できます。設備疲労や軸受けへのダメージとの相関が高く、保全の判断指標として使いやすいのが特徴です。

2.2 4ゾーンの意味

ISO 20816-1では、振動速度の測定値を以下の4ゾーンに分類します。

Zone A:新品・正常範囲

新設・試運転段階の機械に期待される振動レベルです。この範囲にある設備は、問題がなく継続して運転できる状態です。

Zone B:長期運転に適合する範囲

正常な長期使用において許容される振動レベルです。Zone Aより高いですが、設備への悪影響は生じにくく、監視を継続しながら運転を続けて問題ありません。

Zone C:早期対策が必要なレベル

このレベルの振動は長期間継続すると設備に損傷を与える可能性があります。原因調査と対策計画を立てる段階です。すぐに停止する必要はありませんが、「何かが起きている」サインと考え、詳細な調査を進める必要があります。

Zone D:危険水準・即時対応が必要

設備に深刻なダメージを与えるレベルです。このゾーンでは機械損傷のリスクが高く、迅速な対応が求められます。運転停止や緊急補修の判断を行う段階です。

2.3 閾値は設備によって異なる

重要な点として、ゾーンの境界となる数値(閾値)は設備の種類・出力クラスによって異なります。

仮に、振動速度が3.0 mm/s RMSだったとしましょう。これが小型のポンプ(出力15 kW以下)であればZone Cに相当しますが、大型の産業機械(出力300 kW以上)ならZone A〜Bの範囲内という場合もあります。

これは「より大きな機械は、ある程度の振動が構造的に発生しやすい」という特性を反映しています。

SOMEQUIPが設備種別と出力クラスを入力として受け付けているのは、この「設備に応じた閾値の切り替え」を正確に行うためです。

3. SOMEQUIPがISO 20816を採用した理由

3.1 SOMPIPE(SwRI)との対比

SOMのアプリにはSOMPIPE(配管振動診断)もあります。SOMPIPEはSwRI(Southwest Research Institute)の評価基準を採用しています。

では、なぜSOMEQUIPは別の規格(ISO 20816)を使っているのか?

SOMPIPESOMEQUIP
評価基準SwRI線図ISO 20816
評価指標振動変位(μm)+周波数振動速度(mm/s RMS)
対象配管振動回転機械本体の振動
評価の軸変位─周波数の2次元評価速度の単一指標評価

SwRI線図は配管の疲労評価を目的とした基準であり、配管に対しては強力なツールです。しかし、ポンプやモーターなどの回転機械本体の状態評価には対応していません。回転機械の状態管理には、ISO 20816のように「速度×設備クラス」で評価する枠組みが適しています。

3.2 ISO 20816の実績と普及度

ISO 20816は世界中の産業現場で使われており、以下のような特徴があります。

  • ポンプ・モーター・コンプレッサー・ファンという「現場の主役」を網羅している
  • 出力ベースの閾値分類で、設備規模を問わず使いやすい
  • 日本のJISにも対応版がある(汎用性が高い)
  • 設備管理部門や保険会社など、第三者が参照できる信頼性がある

SOMEQUIPのユーザーが診断結果を設備管理台帳や上司への報告書に使う場合、「ISO 20816に基づいた評価」という記述が加わることで、結果の説明責任が果たしやすくなります。

3.3 スマホでISO 20816を使うことの意義

これまでISO 20816に基づいた評価をするには、専用の振動計(数十万〜数百万円)と、規格を理解した技術者が必要でした。

スマートフォンのセンサーは専用振動計と比べると精度や帯域に制約がありますが、スクリーニング(異常の早期発見)の段階であれば十分に実用的です。

仮に、現場のポンプ10台に対して毎月1回の傾向計測を行いたいとします。専用振動計で全台を測ると、測定器の費用・操作習得・計測時間で相当のコストがかかります。SOMEQUIPであれば、作業者1人が巡回しながら1台あたり数分で計測し、その場でゾーン判定を確認できます。

全台スクリーニングしてZone C以上の設備だけを専用計測器で詳細評価する——このような「二段構えの保全」を、SOMEQUIPは実現するためのツールです。

4. スマホ計測の限界と使い方の注意点

4.1 周波数帯域の制約

iPhoneの加速度センサーが計測できる周波数帯域は、一般的に〜50 Hz程度です。一方、専用振動計は数百〜数千 Hzまで計測できます。

このため、SOMEQUIPは低〜中周波の振動スクリーニングには適していますが、以下には対応が難しい場合があります。

  • ベアリングの高周波数欠陥(数百 Hz〜のキャラクタリスティック周波数)
  • 高速回転機械(3,000 rpm以上での詳細な周波数分析)
  • 歯車欠陥の高精度診断

これらの詳細評価が必要な場面では、専用振動計や振動解析の専門家との連携を検討してください。

4.2 あくまでスクリーニングツール

SOMEQUIPの結果は、設備の最終的な合否判定ではなく、「次の一手を考えるための情報」として使います。

SOMEQUIPが得意なこと

  • 設備の異常を早期に「気づく」ためのスクリーニング
  • 月次・週次の傾向管理(変化の把握)
  • 点検記録のデジタル化・レポート化

SOMEQUIPだけでは難しいこと

  • 故障の具体的な原因特定(アンバランスか、ミスアライメントか、ベアリング損傷か)
  • 高周波成分の詳細な周波数分析
  • 設備の余寿命予測や詳細強度評価

5. まとめ:「基準を知ること」が保全の質を上げる

ISO 20816は、回転機械の振動を評価するための国際共通言語です。振動速度(mm/s RMS)という安定した指標と、設備種別・出力に応じた閾値(Zone A〜D)で、誰が測っても同じ基準で比較できる評価を可能にします。

SOMEQUIPはこの規格をスマートフォン上で実装し、専門計測器なしでも「ISO 20816に基づいた評価」を現場でできるようにしました。

📌 この記事のポイント3つ

  1. ISO 20816は回転機械の振動速度(mm/s RMS)を4ゾーン(A〜D)で評価する国際規格
  2. 閾値は設備種別と出力クラスによって異なるため、正確な入力が判定精度に直結する
  3. SOMEQUIPはスクリーニングツールとして最適——Zone C以上が出たら詳細診断へ進む判断材料に使う

💡 明日から現場でできること

  • SOMEQUIPで計測する前に、対象設備の定格出力(kW)を銘板で確認しておく
  • Zone Bまでなら継続運転、Zone Cが出たら原因調査の起点とする判断基準を現場で共有する
  • 結果をPDFレポートで記録し、次回計測値と比較できる状態を作る

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