Somera 開発ストーリー

「設備カルテ」という発想─なぜ保全記録はバラバラになるのか

Fri Mar 20

「設備カルテ」という発想─なぜ保全記録はバラバラになるのか

はじめに

「前任者が何を見ていたかわからない」

「あの設備、いつベアリングを換えたっけ?Excelのどこかに書いたはずだけど……」

「工場長から設備の現状を聞かれたとき、すぐ答えられない」

保全の現場で、こういった場面は繰り返し起きます。記録はある。でも、探せない・共有できない・意味のある形にまとまっていない。Someraの「設備カルテ」は、この問題を解決するために生まれたコンセプトです。

💡 この記事で得られること

  • 保全記録がバラバラになる構造的な原因
  • 「設備カルテ」というコンセプトが解決しようとしていること
  • 設備カルテを始めるうえでの最初の一歩

1. なぜ保全記録はバラバラになるのか

1.1 「ツールが違う」という根本問題

多くの工場では、保全に関する記録がこんな状態で存在しています。

記録の種類よくある保存場所
日常点検表紙のフォーム → ファイル綴じ
振動計測データ専用振動計のメモリ → USB経由でPC
修理・部品交換履歴設備台帳(Excel) → 共有フォルダ
業者への修理依頼メール・口頭 → 担当者のメモ
設備図面・仕様書キャビネット → スキャンデータ

これらはすべて「同じ設備に関する情報」ですが、場所もツールも形式もバラバラです。

ある設備について調べようとすると、紙のファイルを探し、Excelを開き、メールを検索し、担当者に口頭で聞く——という作業が必要になります。

1.2 「人が覚えている」という危うさ

典型的なのが、こんなケースです。

20年選手のベテラン保全担当者がいる工場では、「あのポンプは2年前の夏に異音が出て、インペラを交換した。その後、シール部分から微量のリーク傾向があるから、次の定修で確認が必要」という情報が、担当者の頭の中にあります。

これは非常に価値ある情報ですが、書かれていない。仮にその担当者が退職・異動した場合、この情報は失われます。

さらに問題なのは、「この情報が失われたこと」にすら気づかないことです。引き継ぎした新担当者は、インペラ交換の経緯を知らないまま点検を続け、シールのリーク傾向に気づかないまま何か月も経過する——こうしたパターンが、突発停止の遠因になることがあります。

1.3 「Excelで管理する」の限界

Excelは柔軟で高機能なツールですが、保全記録の管理に使い続けると、いくつかの問題が現れます。

更新が属人的になる: 誰かが入力しなければ更新されない。忙しいと後回しになり、最終更新から数か月経ったファイルが「最新版」として残る。

検索性が低い: 設備ごとにシートが分かれていると、横断的な情報検索が難しい。「全設備で、過去6か月以内にZone C判定が出た設備は?」という問いに答えるのに、複数シートを手動で確認しなければならない。

モバイル対応が弱い: 現場でスマホからアクセスして更新するには不向き。結果として「後でPCで入力する」が定着し、記録が遅れる。

複数人での同時編集に弱い: ファイルロックや上書き事故が起きやすく、チームでの運用に向かない。

2. 「設備カルテ」が目指していること

2.1 カルテのコンセプト

「設備カルテ」というコンセプトの出発点は、医療のカルテです。

患者が何年もかけて受診した記録──検査結果・投薬歴・治療方針の変遷──がカルテに集約されていることで、担当医が変わっても「この患者の今の状態」がわかります。長期的なデータが蓄積されるほど、より精度の高い判断ができるようになります。

設備も同じです。「この設備は、導入から今まで、何が起き・どう対処されてきたか」が1か所にまとまっていれば、担当者が変わっても同じレベルの判断ができます。

Someraの設備カルテは、設備1台ごとに以下を一元管理します。

  • 振動計測履歴:いつ・どのゾーン・どんな数値だったか
  • 点検チェック履歴:いつ・何を確認したか・異常はあったか
  • 修理・部品交換履歴:いつ・何を・誰が・いくらで行ったか
  • 設備情報:導入日・メーカー・定格仕様・図面など

2.2 「その場で入力できること」の重要性

設備カルテが機能するためには、記録が「現場でリアルタイムに入力できる」ことが不可欠です。

「後でPCで入力する」というフローになった瞬間、記録の完成度は下がります。「あとで」は「記憶が薄れてから」という意味でもあり、記録が曖昧になりがちです。

Someraはスマートフォンアプリとして設計されているため、現場でチェックリストを確認しながらその場で入力し、振動を計測した直後にそのまま記録として残せます。「測ったら即カルテへ」が実現できます。

2.3 蓄積されると「見えてくる」もの

設備カルテを一定期間つけ続けると、点の記録が「線の傾向」に変わります。

仮に、あるポンプのSOMEQUIP計測値を月次で記録し続けていたとします。

  • 1〜6か月目:振動速度 1.2〜1.4 mm/s(Zone A)
  • 7〜10か月目:1.5〜1.8 mm/s(Zone A〜B境界)
  • 11〜13か月目:2.1〜2.5 mm/s(Zone B)
  • 14か月目:2.9 mm/s(Zone B上限付近)

この傾向を見れば、「毎月0.2〜0.3 mm/s ずつ増加していて、このペースだと3か月後にはZone Cに達する」という予測ができます。突発停止を待たずに、計画的なメンテナンスの準備ができます。

これが設備カルテの本質的な価値——「記録の積み重ねが、予測の根拠になる」ことです。

3. カルテを始めるための最初の一歩

3.1 「全部揃ってから始める」をやめる

設備カルテを始めようとすると、「全設備の情報を整理してから入力しよう」と考えがちです。でも、この考え方がスタートを遅らせます。

カルテは最初から完璧である必要はありません。設備名と導入日だけ入っている状態でも「始まっている」状態です。そこに振動計測を1件追加し、点検チェックを1枚入力するたびに、カルテは育ちます。

最も大切なのは「今日の記録を今日入れること」の積み重ねです。

3.2 最も気になる設備1台から始める

Someraのお試しプランは設備3台まで無料です。

まず「今、最も気になっている設備」を1台選んでカルテを作ることをお勧めします。振動計測を1件入力するだけで、カルテは始まります。次の月に同じ設備を計測して2件目が入ると、初めて「前回との比較」ができます。

3台まで無料なので、気になる設備を3台選んで試してみてください。

4. まとめ:保全の知識を「組織の資産」にする

「保全記録がバラバラになる問題」は、ツールを変えれば解決するものではありません。「記録が現場で即時入力できて・設備ごとに集約されて・履歴として蓄積されて・チームで共有できる」という仕組みが揃って初めて解決します。

設備カルテは、保全の知識と判断を「個人の経験」から「工場全体の共有資産」へと変えるための手段です。担当者が変わっても、設備の「記憶」は引き継がれます。

📌 この記事のポイント3つ

  1. 保全記録がバラバラになる原因は「ツールの分散」と「人への依存」——Excelや紙では構造的に解決しない
  2. 設備カルテは医療カルテと同じ発想——設備の変化を時系列で蓄積し、担当者が変わっても同じレベルで判断できる状態を作る
  3. カルテは「完璧な状態から始める」のではなく、「今日の1件から始める」のが正しいアプローチ

💡 明日から現場でできること

  • 「今最も気になっている設備」を1台だけ決め、Someraでカルテを作ってみる
  • 今日の点検で見た・感じたことを1件だけ入力してみる
  • 来月の同じ設備の計測値と比べて、変化があるかどうか確認する

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