SOMPIPE 開発ストーリー

現場で試せる!スマホで簡単振動診断のやり方

Wed Feb 18

現場で試せる!スマホで簡単振動診断のやり方

はじめに

「手で触れたとき、なんか振動が大きい気がする……でも、どう判断すればいいかわからない」

設備保全の現場では、こうした"感覚頼りの判断"が、実は多く残っています。専用の振動計を使おうにも、測定器の手配や操作習得に時間がかかり、「ちょっと確認したい」という気軽なニーズには応えにくいのが現実です。

SOMPIPEは、そのギャップを埋めるために開発された振動診断アプリです。スマートフォンに内蔵された加速度センサーを活用することで、特別な測定器なしに配管振動を数値化し、業界標準であるSwRI評価基準と照らし合わせた判定まで自動で行います。

この記事は、設備保全担当者・配管管理者・機械系の現場スタッフの方に向けて書かれています。振動測定の経験がなくても、手順どおりに進めれば今日から使えます。

💡 この記事で得られること

  • SOMPIPEの具体的な操作手順と測定の流れ
  • 測定精度を上げるための「ポイント選定」と「固定方法」の実践的知識
  • 結果画面の読み取り方と、次のアクションへのつなげ方

1. SOMPIPEで何ができるのか?──スマホ診断の仕組みを理解する

1.1 振動診断の"工具化"とは

SOMPIPEのコンセプトは、「振動診断を工具にする」ことです。

レンチやノギスを使うのに資格や専門知識が要らないように、振動測定も「手順どおりに当てれば結果が出る」ツールにする──これがSOMPIPEが目指している姿です。

通常、配管振動の定量評価には、専用の振動計(数十万円以上)と、FFT解析や評価基準に精通した技術者が必要です。SOMPIPEは、スマートフォンの内蔵加速度センサーとアプリのアルゴリズムを組み合わせることで、この敷居を大きく下げています。

1.2 測定からどう評価まで行くのか

SOMPIPEの内部では、以下のような処理が行われています。

【Step 1】加速度データの取得

スマートフォン内蔵の加速度センサーが、X・Y・Z軸の3方向で振動加速度を高速サンプリングします。

【Step 2】変位への変換

取得した加速度データを2回積分し、振動変位(μm単位)を算出します。一般的な専用振動計と同じ処理です。

【Step 3】SwRI評価基準との照合

算出された振動変位と主要周波数を、石油化学・プロセス産業で業界標準として広く使われているSwRI(Southwest Research Institute)の評価線図と照合します。SwRI線図は「変位─周波数」グラフ上に4段階の判定ゾーン(Design / Marginal / Correction / Danger)を持ちます。

【Step 4】判定結果の表示

測定データのプロット位置から、配管の振動状態を色分けで自動判定して表示します。

> なぜSwRI基準なのか? SwRI線図は1976年の開発以来、50年以上にわたって世界中の石油化学プラントで使われてきた、実績ある評価ツールです。開発者自身がその限界を認めつつも、「スクリーニングツールとしての有用性」が高く評価されているため、SOMPIPEの評価基準として採用しています。詳しくはSwRI評価線図の解説記事をご覧ください。

2. 測定準備:必要なものと事前確認のチェックポイント

2.1 用意するもの

SOMPIPEで振動測定を行うために必要なものは、最低限以下の3点だけです。

必要品備考
スマートフォン(iOS対応)加速度センサー内蔵機種(現行のiPhoneはすべて対応)
SOMPIPEアプリApp Storeから無料ダウンロード
マグネットスマホスタンド配管への安定固定に使用(後述)

配管に取り付ける場合は、以下の補助具もあると測定精度が向上します。

補助品用途
Uボルト+プレート(取付金具)配管曲面へのスタンド設置基盤
薄手の手袋または滑り止めケース手持ち測定時の安定性向上

2.2 測定前の確認事項

測定を始める前に、以下の点を確認しておくと、現場での混乱を避けられます。

① スマートフォンの通知設定

測定中に着信・通知が鳴ると計測が中断されることがあります。測定前に機内モードまたは通知オフにしておくことを強く推奨します。

② 設備の運転状態の確認

振動診断は設備が定常運転状態にある時に測定します。起動直後や負荷変動中は数値が安定しないため、通常運転に落ち着いてから測定してください。

③ 測定点のメモ

後で傾向管理を行うためには、「毎回同じ場所で測ること」が不可欠です。測定ポイントを写真と文章で記録しておく習慣をつけましょう。

3. 基本操作:アプリの使い方ステップ解説

SOMPIPEでの測定は、1回あたり約1分で完了します。以下の流れで進めてください。

ステップ操作内容所要時間補足
① 起動アプリを起動する数秒ホーム画面から直接起動
② 固定スマホを測定箇所に取り付ける30秒程度Uボルト+プレート+スタンドで固定
③ 測定開始「測定開始」ボタンをタップタップしたらスマホに触れない
④ 待機そのまま静止して計測完了を待つ10秒計測中は体を離すと精度が上がる
⑤ 結果確認評価タブで結果を確認評価ランクとグラフが表示される

📌 測定中に絶対やってはいけないこと:スマートフォンに触れること。これだけで計測データが大きく乱れます。「測定開始ボタンを押したら手を離す」を徹底してください。

4. 測定ポイントの選び方と注意点

4.1 どこを測るべきか

振動測定は「感覚的に気になる場所」から始めるのが最も実践的です。日常の巡回点検で手を当てたとき「なんか揺れているな」と感じた場所は、測定候補として適切です。

配管系統で特に注意すべき測定ポイントを以下に整理します。

測定対象推奨測定ポイント理由
配管本体機器接続直後(ポンプ・圧縮機吐出口)励振源からの振動が最も強い
配管本体エルボ(曲がり部)の近傍流体の方向転換による応力集中点
配管本体スパン中間(支持点と支持点の中間)たわみが最大になる位置
小口径枝管接続根元部振幅が大きく、疲労破損リスクが高い
架台・サポート振動が伝わっている支持架台構造物への振動伝達の評価

📎 ヒント:「普段、点検で手を触れていた場所」と同じ感覚で測定点を選ぶのが最も自然なアプローチです。初めのうちは直感を信じてください。

4.2 固定方法と精度の関係

スマートフォンの固定方法は、測定精度に直接影響します。測定値のブレの多くは、センサーと対象設備の間に生じる「相対的な動き」が原因です。

✅ 推奨:マグネットスタンド+取付金具による固定

配管への設置には、以下の組み合わせが最も精度が高くなります。

  1. Uボルトとプレートを配管に取り付け、平坦な設置面を作る
  2. マグネットスマホスタンドをプレートに吸着させて固定
  3. スタンドにスマートフォンをはめ込み、センサーを設備に密着させる

この方法では、設備と一体化してスマートフォンが振動するため、設備の振動をダイレクトに計測できます。

⚠️ 手持ち測定を行う場合の注意

Uボルトや金具が準備できない場合、手持ちでも測定は可能ですが、以下の点に注意してください。

NG例改善ポイント
スマホがグラグラしている手のひら全体を設備に押し当て、指でスマホをしっかり挟む
手が宙に浮いている肘を設備か架台に固定し、体のブレを抑える
測定中に指が動く「測定開始」後は指を完全に静止させる
厚手の手袋で滑りやすい薄手の手袋に替えるか、滑り止めスマホケースを使用

🛠 ワンポイント:手持ちで測定する際は、「設備に肘をつける」が一番簡単で効果的なブレ対策です。肘を支点にすることで、手のプルプルとした揺れが大幅に減ります。

4.3 測定方向の考え方

SOMPIPEはX・Y・Z軸の3方向を同時に計測します。配管の場合、一般的に以下の方向が重要です。

方向配管への対応感度が高い状況
水平(横方向)配管の横振れ流体誘起振動、アンバランス
垂直(上下方向)配管の上下振動自重によるたわみ振動
軸方向(配管長手方向)脈動によるスラスト方向振動圧力脈動が強い系統

初回の測定では3方向すべての数値を記録し、最も大きな値が出る方向を把握しておくと、次回以降の比較管理に役立ちます。

5. 結果の見方:グラフと数値を正しく読み取る

SOMPIPEの結果画面には、大きく2種類の情報が表示されます。それぞれの意味と着目ポイントを説明します。

5.1 振動変位評価(SwRI線図)

何を見ているのか: 振動の「大きさ」を「周波数」との組み合わせで評価します。

SwRI評価線図は横軸に周波数(Hz)、縦軸に振動変位(μm)を取り、4つのゾーンに分かれています。

ゾーン意味推奨アクション
Design Zone設計目標範囲内。問題なし定期的な傾向監視のみ
Alert Zone許容範囲だが監視推奨監視継続。変化がないか追う
Marginal Zone修正が必要なレベル詳細調査と早期対策の計画
Danger Zone危険。即座の対応が必要運転条件の見直しまたは緊急補強

着目ポイント:SOMPIPEではDanger Lineからの乖離率を数値で表示します。この数値が小さいほど、Danger Zoneに近い状態です。例えば乖離率が-0.1を切っている場合は、詳細な応力評価や支持追加を真剣に検討する段階です。

> 注意事項:SwRI線図はあくまでスクリーニングツールです。配管の材質・肉厚・支持条件を考慮した詳細評価(FEM解析など)の代わりにはなりません。「Marginal Zone」以上の判定が出た場合は、SOMPIPEの結果を判断材料の一つとして、より詳細な評価へ進んでください。

5.2 加速度波形グラフ(タイムドメイン)

何を見ているのか: 振動の「時間的な変化」を可視化します。

波形グラフでは、X・Y・Z各軸の振動加速度の時間変化が表示されます。SOMPIPEでは各軸のピーク値とRMS値が算出されます。

グラフパターンと意味の例

パターンA:なめらかな正弦波が繰り返されている

回転機器の不釣り合い(アンバランス)によく見られるパターンです。回転周波数の1倍成分が支配的で、振動は比較的安定しています。

パターンB:突発的な高いスパイクが不規則に現れる

ベアリングの損傷や、配管内でのキャビテーション発生時に現れやすいパターンです。平均的なRMS値は低くても、ピーク値が突出して高い場合は要注意です。

パターンC:振動の振れ幅がゆっくり大きくなったり小さくなったりを繰り返す

「うなり(ビート)」と呼ばれる現象で、周波数が近い2つの振動源が干渉しているときに現れます。ポンプ2台並列運転時などで見られます。

👀 まず見るべきポイント:ピーク値がRMS値の何倍になっているかを確認してください。一般的な正弦波ならピーク値はRMS値の約1.4倍です。これが3倍以上になっている場合、衝撃的な成分が混入している可能性があり、詳しく調べる価値があります。

6. よくある失敗とその改善ポイント

振動測定を始めたばかりの方が陥りやすい失敗パターンと、その対策をまとめます。

6.1 測定値の再現性が低い(毎回バラバラになる)

原因の多くは「固定方法のばらつき」

測定ポイントが微妙にずれていたり、スマートフォンの向きが変わっていたりすると、同じ設備でも結果が大きくなります。

改善ポイント:

  • 測定場所を写真で記録する
  • 配管にはUボルトとプレートを据付(常時設置)にする
  • マグネットスタンド+取付金具の組み合わせで固定方法を標準化する
  • 測定時のスマートフォンの向き(画面が上向き、横向きなど)も毎回統一する

6.2 「異常」と判定されたが原因がわからない

SwRI線図の判定はあくまで出発点

判定が「Marginal Zone」以上になったとき、次のステップは「なぜそうなっているか」の特定です。

波形グラフで支配的な周波数を確認し、それが設備の回転数と一致しているか確認します。仮に配管の固有振動数(共振点)と励振周波数が一致していれば、支持点の追加や変更が有効な対策になります。原因の特定が難しい場合は、SOMPIPEのデータをもとに、より詳細な振動解析や専門技術者への相談を検討してください。

6.3 安定しているはずなのに数値が高く出る

測定点の選択が問題の場合

「体感ではそれほど揺れていないのに、数値が高い」という場合、測定ポイントが共振点の腹(振幅が最大になる位置)に当たっている可能性があります。

測定位置を配管軸方向に数10cm移動してみると、振動レベルが大きく変わることがあります。複数点で測定し、振動の分布を把握することで、問題箇所の特定が容易になります。

6.4 まとめ:よくある失敗チェックリスト

ミスの種類よくある原因改善ポイント
結果が毎回バラバラ固定方法・位置がばらつく標準化・写真記録・マグネット固定
「異常」の原因がわからない判定止まりで分析していない波形・周波数との照合を行う
数値が高く出すぎる共振点の腹を測っている測定点を数か所変えて比較する
測定が中断される通知・着信が入る機内モード・通知オフを徹底
毎回同じ結果が出ない起動ブレ・手ブレ測定後にスマホに触らない

7. まとめ:「感覚の診断」から「数値の判断」へ

SOMPIPEによるスマートフォン振動診断は、保全現場の「見えないリスク」を数値で見える化する第一歩です。専用の測定器や専門知識がなくても、10秒の測定でSwRI基準に基づいた判定が得られます。

SOMPIPEによるスマホ診断は、以下のような「保全の新習慣」を生み出す可能性を持っています。

  • いつもの設備を、数値で見る視点が身につく
  • 感覚で判断していた異常に、客観的な根拠が加わる
  • 1回10秒の診断が、未来のトラブルを防ぐ一歩になる

初めは数値に戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れることで"自分なりの指標"が見えてきます。まさに"使って覚える工具"として、SOMPIPEを活用してみてください。

📌 この記事のポイント3つ

  1. SOMPIPEは加速度センサー+SwRI基準で、スマホだけで配管振動のスクリーニングができるアプリである
  2. 測定精度の鍵は「固定方法の標準化」と「測定中に触らない」の2点に集約される
  3. 判定結果は出発点であり、「Marginal Zone」以上が出た場合は詳細調査へ進む判断材料として使う

💡 明日から現場でできること

  • 気になる配管1か所を選んでSOMPIPEで測定してみる
  • 測定ポイントを写真で記録し、次回の比較基準を作る
  • 結果の数値と波形パターンを3回繰り返して「自分なりの正常範囲」を体感する

SOMPIPEを試してみる

配管振動診断アプリSOMPIPEは無料・登録不要でApp Storeからすぐにダウンロードできます。