このグラフ、どう読む?波形の見方・考え方
はじめに
前回は、SOMPIPEで振動を測定する手順と、測定ポイントの選び方について紹介しました。今回はその続きとして、測定結果に表示される「加速度」や「変位」グラフの読み解き方について掘り下げていきます。
SOMPIPEでは、測定後に以下の3種類のデータが表示されます:
- 振動レベル(数値)
- 波形グラフ(時間領域)
- 変位グラフ(周波数領域)
このうち、②と③のグラフ部分は特に「どう見ていいかわからない…」という声が多い箇所です。でも大丈夫。見るべきポイントは決まっています。
今回は、「何が正常で、何が異常か」を判断するための、波形・変位グラフの基本の見方と考え方をお届けします。
1. 波形(加速度波形)の基本と見るポイント
波形とは、時間とともに振動がどう変化しているかを示すグラフです。縦軸に加速度、横軸に時間(秒)がとられています。

✅ 正常な波形の特徴
- 波が一定のリズムで揺れている
- 極端な突起(スパイク)がない
- 全体の振幅(上下の幅)が小さめ
例えば、健康なモーターでは「ウーーン」と一定の波形になります。安定した機械は、波形もきれいに安定しています。
3秒ごとに何かしらの衝撃(スパイク)があるような例では、周期的な異常を疑う必要があります。
✅ 異常の兆候として見られるパターン
| パターン | 疑われる原因 |
|---|---|
| ガタッと大きな突起がある | 衝撃負荷・流体の影響 |
| 全体的に大振幅 | 固定不良・アンバランス |
| ランダムな乱れ | 配管の共振・ゆるみ・流体の影響など |
📌 波形の良し悪しは直感的に"荒れているか"を見ればOKです。
2. 変位(周波数ドメイン)の読み方と意味
FFTは、振動を"周波数ごとの強さ"に分解したものです。回転機械であれば、回転数やその倍数の振動成分がグラフに現れます。

✅ 横軸:周波数(Hz)
- 例)30Hz回転(1800rpm)の設備配管であれば、「30Hz」が1次(1x)
- その倍の「60Hz」「90Hz」などは、2次(2x)、3次(3x)
約30Hzに尖ったピークがある場合、その周波数成分が支配的であることを示します。
✅ 縦軸:振動レベル
- 大きなピークが立っている部分=その周波数で振動が強い
- 異常があると、特定の周波数に尖ったピークが現れる
周波数-変位グラフで読み取れること
| 見え方 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 1xが支配的で高い | アンバランス、偏芯 |
| 2xや3xのピークが強い | 軸の曲がり、軸受のズレなど |
| 高周波側に細かいピークが密集 | 局所的な摩耗・損傷 |
| 全体がモヤっと高め(白いノイズ) | 共振や緩み、背景ノイズ |
🧠 周波数グラフは「機械のどのあたりが悪いか」の仮説を立てる手がかりになります。
3. よくある異常パターン
📉 ケース①:アンバランス
- 波形:一定の振幅でブーンと揺れる・大きなうねりがある
- 原因例:ファンやモーターのローターにゴミや偏重がついているなど
📉 ケース②:ベアリング摩耗
- 波形:周期的に「トン、トン」と突起が混じる
- FFT:高周波側にランダムな細かいピーク群
- 原因:ボールやレースに傷がつき、衝撃的な波形になる
📉 ケース③:緩み・共振
- 波形:ランダムで揺れ幅が大きく、全体にわたってノイズが乗る
- 原因:配管や設備の一部が緩んでいる/フレームが共振している場合
4. やりがちな読み間違い
| 勘違いポイント | 本当のところ |
|---|---|
| FFTにピークがある=すべて異常 | 常に1xピークは出る(回転由来) |
| 数値が高い=壊れてる | 設備や構造により「もともと高め」の場合もある |
| 波形がキレイ=安心 | ベアリング損傷などは"きれいな波"でも出る |
| 異常と診断された=すぐ修理必要 | "注意"レベルなら様子見でもOK。変化が大事 |
🔍 絶対的な数値ではなく、「以前と比べてどうか」がポイントです。
5. 加速度波形と周波数グラフを"組み合わせて"判断する
診断の精度を上げるには、波形とFFTをセットで見るのが理想です。
| 加速度波形 | 周波数グラフ | 判断 |
|---|---|---|
| 突起があり、周期的 | 高周波にピークがある | ベアリング系の異常 |
| 一定の揺れ | 1xで強いピーク | アンバランス・偏芯 |
| ランダムな揺れ、ノイズっぽい | 全域でノイズが乗る | 緩み・外部振動・構造共振の疑い |
📘 "数値+波形+周波数グラフ"の3点セットで見るクセをつけると、判断力がぐんと上がります。
6. まとめ:慣れると「振動がしゃべってくる」
最初は「なんだこれ?」だったグラフも、繰り返し見ているうちに徐々に読めるようになってきます。経験の積み重ねで、波形や周波数グラフから「設備の声」が聞こえてくる感覚になります。
SOMPIPEでは、簡易診断ながらもこのような振動のクセや特徴をつかむ仕組みが揃っています。毎回「どんな揺れだったかな?」と、少しずつ見比べていくことが、保全の新しいスキルにつながります。