フランジ漏れの“意外な原因”と防ぐコツ
- Yusuke Yoshihara
- 7月4日
- 読了時間: 3分
ボルトを締めても止まらない?
1. はじめに:フランジ部の漏れは“誤解されがち”
配管トラブルの中でも、「フランジ部からの滲み」「ガスケットからの吹き出し」などは頻出です。そしてそれを見た人の多くが、まずこう考えます:
「ボルト、緩んでるんじゃない?増し締めしよう!」
でも、実はこれが間違った対処で状況を悪化させることもあるのです。
今回は、フランジ漏れの仕組み、ありがちな原因、正しい対処法を解説しつつ、現場での点検と予防のコツまでご紹介します。
2. フランジからの漏れの“仕組み”
フランジとは、配管をつなぐための「板状の継手」で、ガスケットを挟んでボルトで締結する構造です。
本来の密封メカニズムは:
ガスケットが適切な荷重で均等に圧縮されている
配管自体が無理な力を受けていない(応力なし)
フランジを挟んでナックルしていない
この条件が崩れると、以下のような漏れが発生します:
漏れパターン | 原因の一例 |
ガスケット周囲からのにじみ | 圧縮不均一/材料劣化/低荷重 |
ボルト近傍からのピン漏れ | 締付け不足/片締め/過大荷重による破断 |
使用中の急激な噴き出し | 応力ゆがみ/熱膨張差/振動影響 |
3. “増し締め”が効かない本当の理由
「漏れてる!締めればいいじゃん」は危険。
● なぜ?:ガスケットは“潰す限度”がある
ガスケットは、ある一定の荷重で潰れることを前提に設計されています。これを超えると:
ガスケットが破壊されて逆に密閉力が下がる
ボルトが伸びて応力が抜ける(締付けが無効になる)
フランジ面が永久変形(歪み)して密閉できなくなる
つまり、増し締めは“最後の手段”であり、万能ではないのです。
4. フランジ漏れの“原因トップ3”
✅ ① 締付け荷重のばらつき
ボルト本数が多いフランジほど、手締めでムラが出やすい
特に対角順締めを怠ると密封力に偏りが出る
📌 トルク管理は人任せにせず、トルクレンチでしっかり確認。
✅ ② ガスケットの劣化・選定ミス
高温・高圧・化学腐食環境で材料選定ミスが多発
古いガスケットを再利用している現場もある(NG!)
📌 特にフッ素系流体・高温蒸気では、汎用パッキンはNGなことも。
✅ ③ 配管そのものの応力ゆがみ
配管が強引に取り付けられていた(初期ゆがみ)
温度差・振動でフランジ面が引っ張られた
📌 フランジに手を当てて振動していたら要注意。定盤で面を測ると曲がっていることも。
5. 現場でできるチェックと予防策
● 漏れチェックのポイント
フランジ部に“にじみ”がないか(白い粉や油跡が出る)
周囲に液体痕・水滴・変色がないか
振動や熱変化で一時的な漏れが出ていないか
📌 運転直後と数時間後で比較すると変化が見えることも。
● 予防のためにやるべきこと
対策 | 内容 |
トルク管理の徹底 | 対角締め・段階締めを明示し、トルク表を現場掲示 |
ガスケットの適正化 | 温度・圧力・流体性状に合った材質選定(メーカー仕様書確認) |
配管応力の確認 | 設計時のストレスチェック+現場での“手応え”確認 |
漏れ痕の定期観察 | 視認+触感+サーモカメラ等で“兆候”を見る習慣 |
6. まとめ:フランジ漏れは“構造の問題”でもある
✅ ポイント再確認
漏れの多くは締付け不良か材料劣化に起因
増し締めは万能ではないどころか破壊を進めることも
トルク・ガスケット材・配管の応力状態をトータルで考える
“兆候を見る目”と“締めない判断”が保全力
配管8
Commentaires