保温材の落とし穴と保全視点の「正しい選び方」
- Yusuke Yoshihara
- 7月9日
- 読了時間: 3分
錆もピンホールも保温材のせい?
1. はじめに:保温材は“守り神”か“盲点”か
配管や機器を守る保温材(断熱材)。省エネ、凍結防止、安全対策に欠かせない存在です。でも、保全の現場ではこんな声が少なくありません:
「剥がしたらサビサビだった…」「保温材の中が湿気て腐食してた」
そう、保温材は見えないトラブルの温床にもなりうるのです。今回は、「材質選定の基本」から「保全目線の点検・更新判断」まで、実例交えて解説します。
2. 保温材の“基本機能”と選定の3軸
🔧 主な目的はこの3つ
機能 | 目的 |
① 断熱 | 熱損失の防止/エネルギー効率化 |
② 凍結防止 | 配管内の流体温度保持(冬季対策) |
③ 表面保護 | 作業者のやけど防止/機器の寿命延長 |
🔍 選定に必要な「3つの軸」
使用温度帯(低温/中温/高温)
流体の性状(蒸気/水/薬液/可燃性)
設置環境(屋内/屋外/湿気/腐食性)
3. 材質の種類と特徴(代表例)
材質名 | 使用温度 | 特徴 | 用途例 |
グラスウール | 〜250℃ | 安価・加工性良 | 屋内ダクト・水配管 |
ロックウール | 〜650℃ | 耐火性◎・水に弱い | 蒸気配管・高温設備 |
カルシウムシリケート | 〜800℃ | 硬質・高断熱 | ボイラ・高温炉周り |
フェノールフォーム | 〜150℃ | 難燃・断熱性高い | 建物空調・化学プラント |
ポリエチレン発泡 | 〜90℃ | 柔軟・耐水性◎ | 冷水管・屋外露出配管 |
エアロゲル(高性能) | 〜650℃ | 超断熱・高価格 | 宇宙・石油精製装置 |
📌 材質が間違っていると、内部結露・加水分解・腐食が進行しやすくなります。
4. “保温材起因のトラブル”あるある
🧨 ケース①:保温材の中で配管が錆びていた
ロックウールなど吸水性の高い材質で外装が破れていた
雨水や湿気が内部にこもって腐食が進行
気づいたときにはピンホール→漏れ→稼働停止
📌 対策:吸水性のある材質には、外装材と止水処理を厳重に!
🔥 ケース②:高温流体なのに低耐熱材を使用
140℃の蒸気ラインに、90℃までの発泡保温材を使っていた
材料が熱で変形・縮み→隙間が空いて断熱性ダウン
周辺温度上昇・やけど事故のリスクに
📌 材質選定の際は「流体の最高温度+安全マージン」が必要!
🌫 ケース③:保温材が“結露トラップ”に
冷水管の断熱に隙間や継ぎ目処理が不十分だった
湿気が内部に侵入し、断熱内部で結露→カビ・腐食
内部の腐食や電食が進み、外観からでは発見困難
📌 継ぎ目や端部のシール処理の甘さが命取りになるケース。
5. 点検の着眼点と“保全の勘どころ”
👀 外観でわかる異常
チェック項目 | 見るべきポイント |
保温材の色・変形 | 焦げ・黄ばみ・剥離がないか? |
外装材(アルミ・ステン)の状態 | 破れ・浮き・継ぎ目の隙間は? |
湿気・カビ臭・結露痕 | 保温材端部・支持部周辺を要確認 |
✋ 触ってわかる異常
予想以上に熱い/冷たい=断熱性の劣化
ふかふか・ブカブカ=吸湿または破損
音を立てて押すとパリパリ=経年劣化で硬化
6. 適切な更新と設計時の工夫
✅ 更新の目安(目安年数と条件)
材質 | 使用目安 | 特記事項 |
グラスウール | 約8〜10年 | 湿気に弱く腐食しやすい |
ロックウール | 約10〜15年 | 高温でも縮み劣化あり |
発泡系樹脂 | 約5〜8年 | 紫外線や熱に弱い |
エアロゲル | 10年以上 | 高耐久・高価 |
📌 使用環境によっては、5年以内の交換も必要。
🛠 設計・更新でやっておきたい工夫
保温材の“端部”の撥水処理(シリコン or 接着剤)
屋外ではアルミ外装+防水テープ処理を標準に
定期点検しやすい“開閉式保温材”(スリーブ型)を活用
7. まとめ:保温材は“守りながら壊す”こともある
✅ 要点3つ
保温材は省エネ・防止対策に不可欠だが、盲点にもなりうる
材質選定と施工精度・外装の状態がトラブルを左右する
“見えないところ”を意識して、定期的な外観+触診点検を!
配管9
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