測定条件の設定:サンプリング周波数・測定時間・フィルタ──測定器で設定する3つのパラメータ
はじめに
振動測定器の電源を入れると、最初に現れるのが設定画面です。
サンプリング周波数、測定時間、フィルタ設定──これらを何となく設定していませんか?間違った設定は、高価なセンサーを使っても測定データが無意味になる可能性があります。
この記事では、測定器で設定する3つのパラメータの意味を理解し、測定対象に応じた適切な設定ができるようになることを目指します。
この記事は、振動測定器の設定に悩む技術者・FFT解析の基礎を学びたい保全担当者・測定精度を向上させたい実務者の方に向けて書かれています。
💡 この記事で得られること
- サンプリング周波数とナイキスト周波数の関係
- 測定時間と周波数分解能のトレードオフ
- フィルタの種類と役割の理解
測定器で設定する3つのパラメータ
| パラメータ | 意味 | 影響 |
|---|---|---|
| サンプリング周波数 | 1秒間に何回データを取得するか | 測定できる周波数の上限が決まる |
| 測定時間 | 何秒間測定するか | 周波数分解能が決まる |
| フィルタ | どの周波数範囲を測定するか | 不要な信号を除去できる |
設定の基本的な流れ
- 📐 【STEP 1】測定対象の周波数範囲を確認
- 📐 【STEP 2】サンプリング周波数を設定(最高周波数の2.5倍以上)
- 📐 【STEP 3】測定時間を設定(最低周波数の10周期以上)
- 📐 【STEP 4】フィルタを設定
サンプリング周波数
📌 ナイキストの定理:ある周波数の信号を正確に測定するには、その2倍以上のサンプリング周波数が必要。
- ナイキスト周波数 = サンプリング周波数 ÷ 2
- 基本ルール:サンプリング周波数 ≥ 測定したい最高周波数 × 2.5
| 測定対象 | 最高周波数 | 推奨サンプリング周波数 |
|---|---|---|
| 配管振動(低周波) | 100 Hz | 250〜500 Hz |
| 配管振動(一般) | 500 Hz | 1280〜2560 Hz |
| 一般機械振動 | 1000 Hz | 2560〜5120 Hz |
| ベアリング診断 | 10000 Hz | 25600〜51200 Hz |
測定時間
- 周波数分解能(Δf) = 1 ÷ 測定時間
- 基本ルール:測定時間 ≥ 測定したい最低周波数の 10周期分
| 測定対象 | 最低周波数 | 推奨測定時間 |
|---|---|---|
| ベアリング診断 | 100 Hz | 1〜5秒 |
| 配管振動 | 10 Hz | 10〜30秒 |
| 回転機械 | 10 Hz | 10〜20秒 |
| 建物振動 | 1 Hz | 60〜120秒 |
フィルタ設定
| フィルタ種類 | 役割 |
|---|---|
| アンチエイリアシングフィルタ | エイリアシング防止(自動) |
| ローパスフィルタ | 高周波ノイズ除去 |
| バンドパスフィルタ | 特定周波数帯域のみ抽出 |
測定対象別の推奨設定
ベアリング診断
- サンプリング周波数:25600 Hz
- 測定時間:2〜5秒
- フィルタ:バンドパス 800Hz〜12kHz
配管振動測定
- サンプリング周波数:1280〜2560 Hz
- 測定時間:10〜30秒
- フィルタ:バンドパス 8Hz〜600Hz
ポンプ・送風機
- サンプリング周波数:5120 Hz
- 測定時間:10〜20秒
- フィルタ:ローパス 2.5kHz
まとめ
振動測定器で主に設定する3つのパラメータは、サンプリング周波数・測定時間・フィルタです。
✅ サンプリング周波数は、測定したい最高周波数の2.5倍以上に設定します。
✅ 測定時間は、測定したい最低周波数の10周期以上に設定します。
✅ フィルタは、不要な周波数成分を除去する機能です。
📌 重要なのは、「最高の設定」ではなく、**「測定対象の周波数範囲に応じた適切な設定」**をすることです。