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振動測定手法の全体像:定期測定とシステム監視──目的とコストで選ぶ最適な測定方法

  • 2 日前
  • 読了時間: 17分

はじめに

「振動測定をしたい」と考えたとき、最初に決めるべきは「どんな測定器を使うか」ではなく、「人が測りに行くか、システムに任せるか」です。

この選択が、その後の投資規模や運用方法を大きく左右します。数万円のハンディ振動計で十分な設備もあれば、数百万円のシステム監視が必要な設備もあります。

測定の目的・設備の重要度・予算に応じて、最適な手法を選ぶことが重要です。

この記事では、振動測定手法を「定期測定」と「システム監視」という2つのカテゴリで整理し、どちらを選ぶべきかの判断基準を提供します。


この記事は、保全計画を立てる管理者・測定器選定を検討する技術者・測定手法を比較したい実務者の方に向けて書かれています。

💡 この記事で得られること

  • 定期測定とシステム監視の本質的な違いと選択基準

  • 各手法の特徴・コスト・測定精度の比較表

  • 設備の重要度別の最適な測定方法と段階的導入ガイド


目次

1. 振動測定手法の分類:2つの大カテゴリ

1.1 定期測定 vs システム監視:本質的な違い

振動測定手法の最も重要な分類は、誰がデータを取得するかです。

カテゴリ

データ取得方式

測定頻度の例

コスト感

定期測定

人が測りに行く

年4回、月1回、週1回

低〜中(10〜50万円)

システム監視

システムが自動測定

連続 or 間欠(1時間ごと等)

高(数百〜数千万円)

定期測定は、測定者が定期的に現場に行き、その都度データを取得します。ハンディ振動計を使い、センサーを毎回取り付けて測定します。

システム監視は、センサーとデータ収集装置が常設され、システムが自動的にデータを取得します。連続測定(24時間)でも、間欠測定(1時間に1回等)でも、人の介入なしに自動で測定・記録します。


これを、家庭の体温測定で例えると理解しやすいでしょう

  • 定期測定 = 朝晩の検温:毎日決まった時間に体温計で測る

  • システム監視 = ウェアラブル体温計:自動で体温を記録し続け、発熱したらアラート

どちらが優れているかではなく、目的に応じて選ぶことが重要です。


1.2 測定手法の全体マップ

【振動測定手法の全体像】


 定期測定(人が測りに行く)                 
 ├─ 接触式:ハンディ振動計                 
 │   センサーを毎回取り付け                
 │   価格:10〜50万円                     
 │                                       
 └─ 非接触式:レーザー・画像解析           
     レーザードップラー振動計             
     価格:100〜1000万円(レンタルも)     
                                          
├────────────────────────────────────────┤
 システム監視(システムが自動測定)                                                      
 ├─ 連続監視(24時間連続測定)             
 │  ├─ 有線オンライン監視                 
 │  │   価格:数百〜数千万円              
 │  └─ 無線IoT(高頻度送信)              
 │      価格:数百〜1000万円              
 │                                      
 └─ 間欠監視(スケジュール測定)           
    ├─ 有線+間欠測定                     
    │   例:1時間に1回、30秒測定          
    └─ 無線IoT(低頻度送信)              
        例:1日1回、60秒測定              
        価格:数百〜1000万円              


※ 埋め込み型センサー(センサー常設+手動測定)は
  定期測定の効率化手段として存在しますが、
  導入例が限定的なため本記事では割愛します。

2. 定期測定 vs システム監視:どちらを選ぶか?

2.1 選択の3つの軸

最適な測定手法を選ぶには、以下の3つの軸で評価します。

実際の影響コストや検出速度,予算規模は一例になりますので、適宜置き換えて判断してください。


軸1:設備の重要度(故障時の影響)

重要度

故障時の影響

推奨手法

A(クリティカル)

生産停止、安全リスク、損失 > 1000万円/日

システム監視

B(重要)

部分的影響、損失 100〜1000万円/日

定期測定(高頻度)or システム監視

C(一般)

影響限定的、損失 < 100万円/日

定期測定(低頻度)

軸2:必要な異常検出速度

検出速度

推奨手法

理由

リアルタイム

システム監視(連続)

異常発生から数分〜数時間で検出

数時間〜1日以内

システム監視(間欠)

1測定周期以内に検出

数日〜1週間以内

定期測定(週1回)

定期測定で十分

1ヶ月以内

定期測定(月1回)

コスト効率重視

軸3:予算(初期投資+5年間ランニングコスト)

予算規模

可能な手法

〜50万円

ハンディ振動計

200〜1000万円

小規模システム監視(10〜30点)

1000万円〜

大規模システム監視(50点以上)


2.2 選定フローチャート

Step 1: 設備の重要度を評価

設備が故障した場合の影響を評価します。

  • 生産ライン全体が停止する → Aランク(クリティカル)

  • 一部の工程が停止する → Bランク(重要)

  • 代替機で対応可能 → Cランク(一般)


Step 2: 必要な異常検出速度を決定

設備の劣化速度や故障進行速度から、必要な検出速度を決めます。

  • 急激な故障(数時間〜1日で進行) → リアルタイム検出が必要

  • 通常の劣化(数日〜数週間で進行) → 定期測定で対応可能


Step 3: 予算を確認

初期投資だけでなく、5年間のランニングコストも含めて検討します。


Step 4: 手法を選定

重要度

検出速度

推奨手法

A

リアルタイム

システム監視(連続)

A

数時間〜1日

システム監視(間欠)

B

リアルタイム

システム監視(連続)

B

数日〜1週間

定期測定(週1回)

C

1ヶ月以内

定期測定(月1回)


2.3 コスト比較(5年間トータルコスト)

仮に、こんな状況を考えてみてください

10台の重要設備(Bランク)があり、各4点を週1回測定する場合(合計40測定点)。


パターン1:ハンディ振動計で定期測定

【初期投資】

  • ハンディ振動計(高機能型): 30万円

【年間ランニングコスト】

  • 測定作業: 2時間/週 × 52週 = 104時間/年

  • 人件費: 104時間 × 5,000円/時間 = 52万円/年

【5年間トータルコスト】

  • 30万円 + 52万円 × 5年 = 290万円


パターン2:システム監視(連続・無線IoT)

【初期投資】

  • 無線振動センサー: 40個 × 15万円 = 600万円

  • ゲートウェイ: 3台 × 50万円 = 150万円

  • 監視ソフトウェア: 150万円

  • 合計: 900万円

【年間ランニングコスト】

  • 保守契約: 初期投資の10% = 90万円/年

  • バッテリー交換: 10個/年 × 2万円 = 20万円/年

  • 合計: 110万円/年

【5年間トータルコスト】

  • 900万円 + 110万円 × 5年 = 1,450万円


パターン3:システム監視(間欠・無線IoT)

【初期投資】

  • 無線振動センサー(低頻度型): 40個 × 12万円 = 480万円

  • ゲートウェイ: 3台 × 50万円 = 150万円

  • 監視ソフトウェア: 150万円

  • 合計: 780万円

【年間ランニングコスト】

  • 保守契約: 初期投資の10% = 78万円/年

  • バッテリー交換: 4個/年 × 2万円 = 8万円/年(寿命が長い)

  • 合計: 86万円/年

【5年間トータルコスト】

  • 780万円 + 86万円 × 5年 = 1,210万円


コスト比較まとめ

手法

初期投資

5年間コスト

異常検出速度

定期測定

30万円

290万円

最大1週間遅れ

システム監視(連続)

900万円

1,450万円

リアルタイム

システム監視(間欠)

780万円

1,210万円

最大1時間遅れ

コストだけ見れば、定期測定が圧倒的に安価です。

しかし、システム監視には「異常の早期検出」という価値があります。仮に、設備故障による生産停止が1日あたり500万円の損失を生むとします。

定期測定(週1回)では、最悪の場合、異常発生から1週間後に検出されます。その間に故障が進行し、500万円 × 7日 = 3,500万円の損失が発生する可能性があります。

システム監視(間欠:1時間ごと)なら、異常発生から1時間後には検出でき、計画的に設備を停止して修理できます。生産損失を1日(500万円)に抑えられれば、数回の故障回避で投資を回収できます。


3. 定期測定の手法

3.1 接触式:ハンディ振動計

概要

作業者が測定器を持って測定点に行き、センサーを設備に取り付けて測定します。測定後、センサーを取り外して次の測定点へ移動します。

測定の流れ

【Step 1: 準備】 測定器とセンサー(磁石付き加速度センサー)を準備し、測定点リストを確認します。

【Step 2: 測定点へ移動】 測定対象の設備へ移動し、測定点の表面を清掃します(サビ・塗装を除去)。

【Step 3: センサー取り付け】 磁石でセンサーを取り付け、測定方向(水平・垂直など)を確認します。

【Step 4: 測定】 測定器でデータを取得します(通常10〜30秒)。

【Step 5: 記録】 測定値を記録し、写真を撮影します。

【Step 6: センサー取り外し】 センサーを取り外し、次の測定点へ移動します。


特徴

  • ✅ 初期投資が安い(10〜50万円)

  • ✅ 複数設備を1台で測定できる

  • ✅ 持ち運びが容易

  • ✅ 測定場所・方向を柔軟に変更可能

  • ❌ 測定時にしかデータが取れない(異常の即時検出不可)

  • ❌ 測定者のスキルにより計測誤差が生じる

  • ❌ 測定点が多いと作業時間がかかる


機種タイプ

タイプ

価格帯

機能

用途

簡易型

5〜15万円

総合値(実効値)のみ

スクリーニング

標準型

15〜35万円

実効値+FFT解析

一般診断

高機能型

35〜100万円

FFT+包絡線処理+データ記録

詳細診断

典型的なのは、次のような状況です

月1回の定期点検で、工場内の20台のポンプを測定します。

1台あたり3箇所(駆動側ベアリング、反駆動側ベアリング、ポンプ側ベアリング)×2方向(水平・垂直)= 6測定点。20台で120測定点です。

1測定点あたり1分(移動・取り付け・測定・記録)として、120分 = 2時間。移動時間や準備を含めても、半日で全ポンプの測定が完了します。

月1回×半日 = 年6日間の作業で済むため、ハンディ振動計(30万円)が最もコスト効率が良い選択です。


3.2 非接触式:レーザードップラー振動計

概要

レーザー光を対象物に照射し、反射光のドップラー効果から振動速度を測定します。完全非接触で、センサーを取り付けられない場所も測定可能です。

原理

動いている物体から反射される光は、周波数が変化します(ドップラー効果)。この周波数変化を検出することで、振動速度を計算します。

これは、救急車のサイレンと同じ原理です

救急車が近づいてくる時は音が高く、遠ざかる時は低く聞こえます。レーザードップラー振動計は、この現象を光で利用しています。


特徴

  • ✅ 完全非接触(センサー取り付け不要)

  • ✅ 微小振動を測定可能(nm〜μmレベル)

  • ✅ 高温・回転部など接触不可能な場所も測定可能

  • ✅ 複数点を連続測定可能(走査型)

  • ❌ 高価(100〜1000万円)

  • ❌ 測定面の状態に影響される(光の反射が必要)

  • ❌ 屋外や振動が激しい環境では困難


適用場面

  • 回転体の振動測定(タービンブレード、ファンなど)

  • 高温部の振動測定(炉体、排気管など)

  • 軽量・微細部品の測定(センサーの重さが影響する場合)

  • 振動モード形状の可視化(研究開発)


購入 vs レンタル

レーザードップラー振動計は高価なため、常時使用しない場合はレンタルが有効です。

  • レンタル費用: 1週間30〜50万円程度

  • 年2〜3回の使用なら、購入より経済的


3.3 定期測定の使い分け

項目

ハンディ振動計

レーザーLDV

コスト

◎ 安い

△ 高い

測定精度

○ 良い

◎ 優れる

高温部

△ 困難

◎ 可能

回転部

△ 困難

◎ 可能

一般的用途

◎ 最適

△ 特殊用途

選択基準

  • 通常の測定: ハンディ振動計

  • 高温・回転・アクセス困難: レーザーLDV

  • 詳細解析・研究開発: レーザーLDV(レンタル推奨)


4. システム監視の手法

4.1 連続監視:24時間連続測定

概要

設備に常設したセンサーが24時間連続でデータを取得し、リアルタイムで振動を監視します。

システム構成

【連続監視システム】

設備A ─[センサー]─┐
設備B ─[センサー]─┼─[データ収集装置]─[ネットワーク]─[監視PC]
設備C ─[センサー]─┘        ↓                            ↓
                      [連続記録]                      [警報表示]
                                                      [トレンド表示]

データの流れ

  1. センサーが常時振動を検出(例:1秒ごと)

  2. データ収集装置が信号を処理・デジタル化

  3. ネットワーク経由で監視PCに送信

  4. 監視ソフトが異常判定・警報発報

  5. データベースに蓄積(長期トレンド分析用)


特徴

  • ✅ 24時間連続監視

  • ✅ 異常を即座に検出・警報(数分〜数時間以内)

  • ✅ 長期的なトレンド管理

  • ✅ 過去データの保存・解析

  • ❌ 初期投資が高い(数百万〜数千万円)

  • ❌ データ量が膨大

  • ❌ 保守・メンテナンスが必要


適用場面

  • Aランク設備(故障時の影響が極めて大きい)

  • 急激な故障が想定される設備

  • 24時間連続運転の設備

  • 法規制で常時監視が必要な設備


4.2 有線 vs 無線の選択

4.2.1 有線オンライン監視

特徴

  • ✅ 通信の安定性が高い

  • ✅ 高速・大容量通信が可能

  • ❌ 配線工事が必要(既設設備への導入が困難)


適用場面

  • 新設工場(配線計画段階)

  • 通信安定性を最優先する場合


4.2.2 無線IoT監視

特徴

  • ✅ 配線工事不要(設置が容易)

  • ✅ 既存設備への後付けが容易

  • ❌ 無線通信の安定性(電波干渉、距離制限)

  • ❌ バッテリー交換が必要


通信方式

方式

通信距離

バッテリー寿命

用途

Wi-Fi

〜100m

数ヶ月

既存Wi-Fi活用

LPWA(LoRaWAN等)

〜数km

5〜10年(間欠時)

広域

適用場面

  • 既設工場(配線工事困難)

  • 広域分散設備


よくあるのが、こんなケースです

広大な工場(敷地1万m²)に散在する50台の設備を監視したいとします。

有線システムでは、数百メートルのケーブル配線が必要で、工事費だけで数百万円かかります。既存の工場に配線を追加するのは、生産を止める必要があり現実的ではありません。

無線IoT監視なら、各設備に無線センサーを取り付け、工場内に数台のゲートウェイを配置するだけです。配線工事は不要で、生産を止めずに導入できます。

ただし、金属製の建屋内では電波が届きにくい場合があるため、導入前に電波状況の調査が推奨されます。


4.3 間欠監視:スケジュール測定

概要

センサーとデータ収集装置は常設されていますが、測定は「1時間に1回、30秒間」など、スケジュール設定されたタイミングでのみ行います。

連続監視との違い

項目

連続監視

間欠監視

測定頻度

常時(1秒ごと等)

間欠(1時間に1回等)

データ量

膨大

少ない

異常検出速度

リアルタイム

最大1測定周期遅れ

バッテリー寿命(無線)

短い(数ヶ月)

長い(5〜10年)

コスト

適用場面

  • ゆっくり進行する劣化を監視(腐食、疲労等)

  • バッテリー駆動で長期運用したい

  • 通信コストを抑えたい(クラウド型)

  • データストレージを節約したい

  • Bランク設備(即時検出は不要だが、定期測定より高頻度が必要)


よくあるのが、こんなケースです

50台の補助設備(Bランク)があり、振動の急激な変化は考えにくいが、長期的な劣化傾向を把握したい場合。

連続監視では、データ量が膨大になりコストも高くなります。1時間に1回、60秒の測定を行う間欠監視なら、データ量は1/60に削減でき、バッテリー寿命も大幅に延びます。


測定パターン例

【1時間ごとの間欠測定】

00:00 - 測定開始
00:00〜00:01 - 60秒間データ取得
00:01 - FFT解析を実施
00:01 - 異常判定
00:01 - 結果のみをクラウドに送信
00:01〜01:00 - 待機(バッテリー節約)
01:00 - 次の測定開始

異常検出は最大1時間遅れますが、ゆっくり進行する劣化であれば十分対応可能です。


4.4 クラウド型監視サービス

概要

センサー・通信・データ解析・可視化をパッケージ化したサブスクリプション型サービスです。

特徴

  • ✅ 初期投資を抑えられる(月額課金型)

  • ✅ サーバー・ソフトウェアの保守が不要

  • ✅ スマホ・タブレットで監視可能

  • ❌ データがクラウドに保存される(セキュリティ検討必要)

  • ❌ 長期的には総コストが高くなる可能性

月額費用の例

  • センサー1点あたり: 5,000〜10,000円/月

  • 10点監視の場合: 5〜10万円/月 = 60〜120万円/年


5年間トータルコスト比較

方式

初期投資

5年間総コスト

自社構築(無線IoT)

750万円

1,200万円(50点)

クラウドサービス

50万円

350〜650万円(10点)

小規模(10〜20点)なら、クラウドサービスが有利です。大規模(50点以上)になると、自社構築の方が経済的になります。


5. 実務での使い分けパターン

5.1 パターン1:中小工場(設備数20〜50台)

状況

  • 従業員数: 50〜100名

  • 設備: ポンプ・送風機・コンプレッサー等 計50台

  • 重要度: 全てBまたはCランク

推奨構成

  • ハンディ振動計1台(30万円)

  • 年4回の定期測定(1回2日間)


理由 設備数が限られており、クリティカルな設備がない場合、定期測定で十分です。年8日間の測定作業で全設備をカバーできます。


5年間コスト

  • 初期: 30万円

  • 年間人件費: 8日 × 4万円/日 = 32万円

  • 5年間総額: 190万円


5.2 パターン2:大規模プラント(連続運転)

状況

  • 従業員数: 200名以上

  • 設備: 主要設備10台(Aランク)、その他50台(B・Cランク)

  • 運転: 24時間連続、停止すると数千万円/日の損失

推奨構成

  • クリティカル設備10台: システム監視(連続、800万円)

  • その他設備50台: ハンディ振動計で定期測定(30万円)


理由 主要設備はシステム監視で異常を即座に検出。その他の設備は定期測定でコストを抑制。ハイブリッド構成が最も経済的です。


5年間コスト

  • システム監視: 800万円 + 90万円/年 × 5 = 1,250万円

  • 定期測定: 30万円 + 32万円/年 × 5 = 190万円

  • 5年間総額: 1,440万円

仮に、システム監視により年1回の故障を回避できれば(損失3,000万円/回と仮定)、1年で投資を回収できます。


5.3 パターン3:広域設備(複数建屋)

状況

  • 敷地面積: 5万m²

  • 建屋: 5棟に分散

  • 設備: 100台以上

推奨構成

  • 無線IoTシステム監視(間欠、1,200万円)

  • 重要設備から順次導入(第1期: 30台)


理由 配線工事が困難な広域分散設備には、無線IoTが最適です。間欠監視でコストとバッテリー寿命を最適化。


導入計画

  • 第1期(1年目): Aランク設備30台 → 720万円

  • 第2期(2年目): Bランク設備30台追加 → 360万円

  • 第3期(3年目): 残り40台追加 → 480万円


5.4 パターン4:研究開発・詳細解析

状況

  • 新規設備の振動特性評価

  • 振動モード形状の可視化が必要

  • 使用頻度: 年2〜3回

推奨構成

  • レーザードップラー振動計(レンタル)

  • 1週間レンタル × 3回/年 = 150万円/年


理由 購入すると数百万円かかる機器も、年数回の使用ならレンタルが経済的です。


5.5 パターン5:予算制約がある場合

状況

  • 振動測定を始めたいが、予算が限られている

  • 初期投資: 50万円以内

推奨構成

  • 簡易型ハンディ振動計(10万円)

  • まず効果を実証してから本格導入


理由 低予算でスタートし、振動測定の価値を経営層に示してから、予算を確保して本格導入します。


6. 段階的導入の実践ガイド

6.1 段階的導入の考え方

いきなり全設備にシステム監視を導入する必要はありません

多くの工場では、以下のような段階的なアプローチが有効です。

【段階的導入のロードマップ】

Phase 1: 定期測定で全体把握(初年度)
 ↓  異常設備・クリティカル設備を特定
Phase 2: 重要設備にシステム監視導入(2年目)
 ↓ データ蓄積・効果実証
Phase 3: 測定頻度の最適化(3年目以降)
 ↓ 安定設備は測定頻度減、要注意設備は監視強化

6.2 Phase 1: 定期測定で全体把握

目的: 全設備の振動レベルを把握し、異常設備を特定

実施内容

  1. ハンディ振動計を1台導入(30万円)

  2. 全設備(50台)の測定を実施(年2回)

  3. ベースライン(基準値)を確立

  4. 設備をA・B・Cランクに分類

成果

  • 振動が大きい設備を特定

  • 設備の重要度を評価

  • Phase 2の優先順位を決定

期間: 1年間


6.3 Phase 2: 重要設備にシステム監視導入

目的: クリティカル設備の異常を早期検出

実施内容

  1. Aランク設備(5〜10台)にシステム監視を導入

  2. 連続 or 間欠を選択(設備特性に応じて)

  3. 警報値を設定

  4. 異常検出時の対応手順を確立

投資額: 500〜1,000万円(設備台数による)

成果

  • 異常の早期検出

  • 計画的な保全の実現

  • ダウンタイムの削減

期間: 1〜2年間


6.4 Phase 3: 測定頻度の最適化

目的: データに基づいて、各設備の最適な測定頻度を決定

実施内容

  1. 2年間のデータを分析

  2. 安定した設備(振動変化が小さい)→ 測定頻度を下げる(年4回→年2回)

  3. 要注意設備(振動が増加傾向)→ 監視を強化(定期測定→システム監視)

成果

  • 測定作業の効率化

  • 予算の最適配分

  • 真に必要な設備への集中投資


6.5 段階的導入の効果

限られた予算で最大の効果を得られます。

Phase

投資額

効果

Phase 1

30万円

全体像把握、優先順位決定

Phase 2

800万円

クリティカル設備の保護

Phase 3

追加投資不要

運用最適化

全設備に一度にシステム監視を導入すると数千万円かかりますが、段階的導入なら総額1,000万円以内で、効果的な振動管理体制を構築できます。


7. まとめ

振動測定手法は、「定期測定」と「システム監視」という2つの大カテゴリに分けられます。

定期測定は、人が測りに行く方式で、ハンディ振動計を使います。コストが低く、多くの一般設備に適しています。


システム監視は、システムが自動的にデータを取得する方式で、連続監視(24時間)と間欠監視(1時間ごと等)があります。異常の早期検出が可能で、クリティカルな設備に適しています。


重要なのは、「すべての設備に最高の測定手法を導入する」のではなく、「設備の重要度と予算に応じて最適な手法を選ぶ」ことです。


📌 この記事のポイント3つ

  1. 測定手法は「定期測定」と「システム監視」に大別される。設備の重要度で選択

  2. システム監視には「連続」と「間欠」があり、用途に応じて使い分ける

  3. 段階的導入(Phase 1→2→3)により、限られた予算で最大の効果を得られる


💡 明日から現場でできること

  • 自社設備をA・B・Cランクに分類し、各ランクの測定方法を決める

  • Phase 1としてハンディ振動計1台を導入し、全設備のベースライン測定を開始

  • Aランク設備(クリティカル)からシステム監視の導入を検討する


記事ID: measurement-2

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