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その振動、本当に大丈夫?──“加速度・変位・周波数”から読み解く異常振動の兆候

  • 執筆者の写真: Yusuke Yoshihara
    Yusuke Yoshihara
  • 5月29日
  • 読了時間: 4分

はじめに

「なんとなく揺れてるけど…」「音もうるさいけど、壊れてないし…」

こうした振動の“気になる状態”、どこからが異常なのか?どうすれば“見える化”できるのか?

本記事では、振動を測るときによく出てくる「加速度・速度・変位」というキーワードを、数式と現場感覚でつなげて解説。

  • 振動はどう測るのか

  • 何Hzなら危険? どこを見れば異常?

  • 現場での“判断基準”は?

といった疑問に対し、理論×実践の両面から答えていきます。


目次

1. 振動ってどうやって測るの?
2. 加速度・速度・変位の関係を押さえよう
3. 異常かどうかの“目安”ってあるの?
4. よく使われる測定機器とポイント
5. “危険な揺れ”を見逃さないためのチェックリスト


1. 振動ってどうやって測るの?

配管や機器が振動している状態を「目で見えない数字」にするには、以下の方法があります:

🛠 主な振動測定方法

方法

特徴

用途

加速度センサー(加速度計)

小型で感度高い

常設・高精度モニタ

レーザー変位計

非接触・高価

研究用途や短期診断

サーモグラフィ

熱異常とセットで判断

複合診断

スマホアプリ

手軽・簡易FFT付きも

初期チェック・教育用途

測定の基本は「時系列データを周波数(スペクトル)に変換」し、「どの周波数帯でどれくらい振れているか」を見ることです。


2. 加速度・速度・変位の関係を押さえよう

振動を表す量には、主にこの3つがあります:

  • 加速度 [m/s²]:力の大きさに直結

  • 速度 [mm/s]:構造への“ダメージ度合い”に近い

  • 変位 [μm]:実際にどれだけ動いたか

🔁 関係式(単振動を仮定):








上から順に,変位(x)、速度(v)、加速度(a)です。

加速度は振動数の2乗で増加!→ 高周波では、少しの変位でも非常に大きな加速度になる。


📌 ポイント:

メリット

弱点

加速度

感度が高い・高周波に強い

数値が直感的にわかりにくい

速度

“振動エネルギー”のイメージに近い

周波数で補正が必要

変位

実際の揺れの大きさが見える

低周波でないと感知困難


3. 異常かどうかの“目安”ってあるの?

🧾 ISO規格による評価基準

ISO20816シリーズとして従来のISO10815およびISO7919シリーズが統合されて発行されています。

ここには機械の回転部分、非回転および非往復運動部分における振動の測定と評価のための一般的条件と手順を規定しています。

対象となる機械の種類や大きさごとに、振動速度の実行値が主な評価要素として規定されています。

許容値の例(ISO 20816-3 などに準拠)

状態

振動速度 RMS値(mm/s)

A: 優良(Good)

0~1.4

B: 許容範囲(Satisfactory)

1.4~2.8

C: 注意(Unsatisfactory)

2.8~4.5

D: 危険(Unacceptable)

4.5以上

※定格出力が15kW<Pw<300kWの中型機械で剛支持の例


✅ 配管の場合の目安

🧾SwRI基準

アメリカの研究機関SwRIにより「配管振動振動評価線図」というものを過去の事故事例を元に発表しています。

これは,周波数ごとの振動振幅を評価するもので4つの基準線があります。

評価条件もありますが、対象は下記に示すISOより幅広く一つの指標として使用できると考えられます。(ただし一般的に保守的すぎるという声もあります)


🧾ISO20816-8

上述しているISOシリーズの中に、往復圧縮機というカテゴリーがPart8にあります。この中で,接続する配管についても記載があり、振動速度の実効値による評価基準があります。ただし,こちらも適用条件が幅狭く絶対値判定に使うには限られます。


4. よく使われる測定機器とポイント

機器名

特徴

現場Tips

FFT対応の加速度計

周波数分析に必須

磁石付きプローブが便利

振動計(ハンディ型)

小型で持ち運び可

簡易診断・傾向把握に最適

スマホアプリ

コストゼロ

簡易診断・スクリーニング

📌 測定時の注意点:

  • 感度と軸方向を意識(X/Y/Z軸どこに貼るか)

  • ノイズ源(配線・電源・風)を避ける

  • 繰り返し測定と平均化でブレを抑える


5. “危険な揺れ”を見逃さないためのチェックリスト

  •  加速度5 m/s²以上のピークがある

  •  20〜60 Hzの範囲で尖ったピークがある(共振の疑い)

  •  測定点に対して明確な“変形モード”が見える(動画・波形)

  •  時間とともにピークが増加傾向にある

  •  バルブ開閉やライン切替で急変が起きる


まとめ

「振動を数字で見る」=“診断のはじまり”です。

加速度・変位・周波数を正しく理解すれば、目に見えなかった“危険の兆し”を、定量的に把握できます。

🔑 本記事のポイント:

  1. 加速度・速度・変位は振動の“異なる顔”

  2. 振動数が高いほど、加速度の影響が大きい

  3. 簡易ツールから始めても十分に兆候はつかめる

  4. 一定の“数値目安”を超えたら、原因特定と対処の段階へ


振動-No.5

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