配管の話

配管の非破壊検査:UT・PT・MTの使い分け──外注時に何を頼むか

Wed Jul 22

配管の非破壊検査:UT・PT・MTの使い分け──外注時に何を頼むか

配管の欠陥を切断・分解せずに調べる「非破壊検査」には、UT(超音波診断)・PT(浸透探傷)・MT(磁粉探傷)という代表的な3手法があります。名前は聞いたことがあっても、どれが何を検出できるのか、どう使い分けるのかは意外と整理されていません。この記事では、3手法の原理と得意分野を比較し、欠陥の位置・材質から手法を選ぶ判断フローと、外注時に何を依頼すればよいかを解説します。


UT・PT・MTとは? いずれも配管を壊さずに欠陥を調べる非破壊検査の手法です。UT(超音波診断)は超音波の反射で内部の肉厚減少・内部欠陥を検出し、PT(浸透探傷)は液体の毛細管現象で表面に開いたキズを可視化し、MT(磁粉探傷)は磁化した際の磁束の乱れで強磁性体表面・表層のキズを検出します。検出対象と対象材質が異なるため、欠陥の種類に応じて使い分ける必要があります。


はじめに

「配管の検査を外注したいが、UTとPTとMT、どれを依頼すればいいのか分からない」——中小製造業の保全担当者からよく聞く悩みです。検査会社に丸投げすれば適切な手法を選んでもらえますが、それぞれが何を見ているのかを知らないまま依頼すると、見当違いの検査を頼んでしまったり、報告書の意味を正しく読み取れなかったりします。

この記事では、UT・PT・MTそれぞれの原理と得意分野を整理し、現場でどう選べばよいかを解説します。

この記事は、配管の検査手法を選定・外注する立場の中小製造業の保全担当者の方に向けて書かれています。

💡 この記事で得られること

  • UT・PT・MTそれぞれの原理と、検出できる欠陥の種類
  • 欠陥の位置(表面か内部か)・材質(磁性体か非磁性体か)から手法を選ぶ判断フロー
  • 外注時に何を伝えれば、意図した検査をしてもらえるか

1. 3手法、何を見るためのものか

3手法はいずれも「配管を壊さずに欠陥を見つける」という目的は同じですが、検出できる欠陥の位置・対象材質がまったく異なります。

手法検出対象対象材質主な適用例
UT(超音波診断)内部欠陥・肉厚減少材質を問わず使える腐食・エロージョンによる減肉測定、溶接部内部の欠陥検査
PT(浸透探傷)表面に開口したキズ材質を問わず使える(金属・非金属とも可)ステンレス溶接部の応力腐食割れ、表面の微細クラック
MT(磁粉探傷)表面・表層のキズ強磁性体のみ(炭素鋼等)炭素鋼溶接部の表面クラック、鍛造品の表層欠陥

UTは「内部」、PT・MTは「表面」を見る手法だという点がまず大きな違いです。さらにPT・MTの2つは同じ「表面のキズを見る」手法でありながら、対象材質という決定的な違いがあります。この違いは次章以降で詳しく見ていきます。


2. UT(超音波診断)──内部の欠陥と肉厚を測る

UT(Ultrasonic Testing:超音波診断)は、対象物に超音波を入射し、内部からの反射波(エコー)を解析することで、肉厚・内部のキズ・空洞などを検出する手法です。配管保全では特に、超音波厚さ計を使った肉厚測定がよく使われます。

UTの基本プロセス

  1. カプラントの塗布:探触子(プローブ)と検査面の間に空気が入らないよう、接触媒体(カプラント)を塗る
  2. 超音波の入射:探触子から対象物内部へ超音波を送信する
  3. 反射波の受信:内部の欠陥面や配管の反対側の面(底面)で反射した超音波(エコー)を探触子で受信する
  4. 時間差の解析:送信から受信までの時間と、材料内を伝わる音速から、肉厚や欠陥までの距離を計算する
  5. 判定:得られた肉厚の実測値やエコーの波形パターンから、減肉量・内部欠陥の有無を判定する

UTの強みと限界

  • ✅ 配管の内部の減肉やキズを、切断せずに定量的な数値として把握できる
  • ✅ 同じ点を定期的に測れば、減肉の進行速度から余寿命を概算できる
  • ✅ 材質を問わず使える(金属・非金属とも可)
  • ❌ 専用機器とトレーニングが必要
  • ❌ 測定面の状態(塗装・サビ・カプラントの塗布など)に精度が影響される
  • ❌ 表面のごく浅いキズ(後述のPT・MTが得意とする領域)は、UTでは見落とされることがある

腐食・エロージョンによる全面的な減肉や、溶接部内部に埋もれた欠陥(内部空洞・融合不良など)を調べたいときは、UTが第一選択になります。なお、UTを打音検査・振動測定と比較した「そもそもどの検査手法から手を付けるか」という切り口は打音検査 vs 振動測定 vs 超音波診断でも解説しています。


3. PT(浸透探傷)──表面のキズを可視化する

PT(Penetrant Testing:浸透探傷)は、液体の毛細管現象を利用して、表面に開口したごく微細なキズを目に見える形にする手法です。

PTの基本プロセス

  1. 洗浄:検査面の油分・汚れを除去する
  2. 浸透液の塗布:色素または蛍光剤を含んだ浸透液を検査面に塗り、一定時間(数分〜数十分)置く。キズがあれば毛細管現象で浸透液が染み込む
  3. 除去:検査面に残った余分な浸透液を拭き取る(キズの中に染み込んだ分は残る)
  4. 現像剤の塗布:白い粉末状の現像剤を塗ると、キズの中の浸透液が毛細管現象で染み出し、キズの形ににじみ出る
  5. 観察:白色光(色素浸透液の場合)またはブラックライト(蛍光浸透液の場合)でにじみ出たパターンを観察し、キズの位置・形状を判定する

PTの強みと限界

  • ✅ 材質を問わず使える(金属・非金属、磁性体・非磁性体を問わない)。ステンレスやアルミにも使える
  • ✅ 特別な大型機器が不要で、比較的安価
  • ✅ 微細な表面クラックを高感度で検出できる
  • ❌ 表面に開口したキズしか検出できない(内部の欠陥・表面下に留まるキズは検出不可)
  • ❌ 検査面の粗さ・多孔質な表面(鋳肌など)では誤判定が起きやすい
  • ❌ 検査後の洗浄・後処理に手間がかかる

PTが特に活躍するのは、ステンレス配管の溶接部です。ステンレスは後述のMTが使えない非磁性体のため、応力腐食割れ(SCC)のような表面クラックを検査する場合、PTが実質的な第一選択になります(配管材質別・劣化モード一覧でも、ステンレスの孔食・SCC・粒界腐食に対してPTが割り当てられているのはこのためです)。


4. MT(磁粉探傷)──磁化して表面・表層のキズを見つける

MT(Magnetic Particle Testing:磁粉探傷)は、対象物を磁化させたときに生じる磁束の乱れを利用して、表面および表層直下のキズを検出する手法です。

MTの基本プロセス

  1. 磁化:ヨーク・プロッド(電極棒)・コイルなどを使い、検査対象を磁化させる
  2. 磁粉の散布:鉄粉(乾式)または鉄粉を含んだ液体(湿式)を検査面に散布する
  3. 観察:健全な部分では磁束がまっすぐ流れるが、表面や表層直下にキズがあると、そこで磁束が漏れ出す(漏洩磁束)。漏洩磁束は磁粉を引き寄せるため、キズの位置に磁粉が集まり、模様として可視化される
  4. 判定:磁粉が集まったパターンの位置・形状からキズを判定する

MTの強みと限界

  • ✅ PTよりも高感度で、表層直下(ごくわずかに表面から離れた位置)のキズも検出できる
  • ✅ 前処理・後処理の手間がPTより少なく、検査自体は比較的短時間で終わる
  • 強磁性体(炭素鋼・低合金鋼等)にしか使えない。ステンレス(オーステナイト系)やアルミには原理上使えない
  • ❌ 磁化装置が必要で、PTよりやや大がかりになりやすい
  • ❌ 検査後、対象物に残留磁気が残ることがあり、用途によっては脱磁処理が必要になる

MTが得意とするのは、炭素鋼配管の溶接部の表面クラックです。同じ「表面のキズを見る」検査でも、材質によってPTとMTのどちらを使うべきかが決まる——これがこの2手法を理解するうえで最も重要なポイントです。


5. 手法を選ぶ判断フロー

ここまでの内容を、現場で使える判断フローに整理します。

Q1. 調べたい欠陥は「表面」か「内部」か?
    → 内部(減肉・内部の空洞や欠陥):UTを選ぶ
    → 表面(クラック・割れ):Q2へ

Q2. 対象は強磁性体(炭素鋼・低合金鋼等)か?
    → YES:MTを選ぶ(PTより高感度・迅速)
    → NO(ステンレス・アルミ等の非磁性体):PTを選ぶ(MTが原理上使えないため)

Q3. 溶接部など、表面と内部の両方が懸念される箇所か?
    → YES:UTとPT(またはMT)を併用する

よくあるのが、こんなケースです。 炭素鋼配管の溶接部に、施工不良が疑われるとしましょう。まずUTで内部の融合不良・空洞の有無を確認し、あわせてMTで表面のクラックの有無を確認する——という2手法の組み合わせが一般的です。もし同じ溶接部がステンレス配管だった場合は、MTの代わりにPTを使うことになります。


6. 外注時に何を依頼すればいいか

非破壊検査は専門の検査会社に外注するケースが大半です。的確に依頼するために、伝えるべき情報を整理します。

伝えるべき情報

  • 検査対象の材質:炭素鋼かステンレスか(MTが使えるかどうかに直結する)
  • 懸念している欠陥の種類:全面的な減肉が心配なのか、溶接部のクラックが心配なのか
  • 検査箇所:配管全体か、特定の溶接部・エルボ部・分岐部に絞るのか
  • 過去の検査記録の有無:初回検査か、前回値と比較したいのか(UTの肉厚測定では特に重要)

報告書で確認すべきポイント

  • UTの場合:測定点ごとの肉厚の実測値と、設計肉厚(呼び厚さ)との差
  • PT・MTの場合:指示模様(キズを示すパターン)の位置・長さ・数。「異常なし」だけでなく、どこをどう検査したかの記録が残っているか

検査会社に「よろしくお願いします」とだけ伝えるのではなく、何を心配していて、何を確認してほしいのかを具体的に伝えることで、必要な検査が過不足なく行われ、報告書の内容も理解しやすくなります。


7. よくある誤解と注意点

誤解1:MTはどんな配管にも使える万能な検査だ正解:MTは強磁性体専用です。ステンレス配管には原理上使えず、PTを選ぶ必要があります。

誤解2:UTを使えば表面のキズも内部の欠陥も両方分かる正解:UTは主に内部の肉厚・内部欠陥の検出に強い手法です。ごく浅い表面クラックの検出には、PT・MTの方が適しています。

誤解3:非破壊検査を1回やれば十分だ正解:UTによる肉厚測定は、1回の測定では「今の厚み」しか分かりません。定期的に測って初めて減肉の進行速度が見え、交換時期の判断に使えます。


まとめ

配管の非破壊検査で使われるUT(超音波診断)・PT(浸透探傷)・MT(磁粉探傷)は、いずれも配管を壊さずに欠陥を調べる手法ですが、検出できる欠陥の位置(表面か内部か)と対象材質(磁性体か非磁性体か)が異なります。この違いを理解しておけば、外注時にも的確な依頼ができ、報告書の内容も正しく読み取れるようになります。

📌 この記事のポイント3つ

  1. UTは内部の減肉・欠陥、PT・MTは表面のキズを検出する。見ている「位置」が違う
  2. PT・MTはどちらも表面のキズを見るが、MTは強磁性体専用。ステンレス等にはPTを使う
  3. 外注時は「材質」「懸念している欠陥の種類」「検査箇所」を具体的に伝えることが重要

💡 明日から現場でできること

  • 検査を依頼したい配管箇所の材質(炭素鋼かステンレスか)を確認しておく
  • 過去の検査記録(UTの肉厚実測値など)が残っているか確認する
  • 検査会社への依頼時に、心配している欠陥の種類を具体的に伝える
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