SOMEQUIPで診断できる設備・できない設備──ISO 20816の対象範囲とスマホ計測の限界
「うちのこの設備、SOMEQUIPで測れますか?」という質問をよくいただきます。SOMEQUIPはISO 20816という国際規格に基づいて判定を出すアプリですが、この規格自体に「対象とする設備」の範囲があり、さらにスマートフォンのセンサーには専用振動計にはない制約もあります。この記事では、両方の観点から「測れる設備」「測れない・注意が必要な設備」を整理します。
はじめに
SOMEQUIPを導入する前に一番よく聞かれるのが、「うちの設備は対象になるのか」という質問です。
ポンプやモーターなら大丈夫そうだが、では自社の古いコンプレッサーは? 低速で回る大型の送風機は? こうした疑問に答えないまま使い始めると、「測ったのに判定がおかしい」「そもそも規格の対象外だった」という行き違いが起きます。
この記事では、SOMEQUIPが採用しているISO 20816の対象機械と、スマートフォンのセンサーゆえの限界を分けて整理し、「うちの設備は測れるか」を自分で判断できるようにします。
💡 この記事で得られること
- ISO 20816(SOMEQUIPの評価基準)が対象とする設備・対象外の設備
- スマホセンサーならではの制約と、専用振動計との違い
- 規格の対象外設備でも記録・監視用途に使う方法(「その他設備」タグ)
- 「測れるか迷ったとき」の具体的な判断基準
1. ISO 20816が対象とする設備の範囲
SOMEQUIPが採用しているISO 20816は、シリーズ規格全体を通じて「一般産業用の回転機械」を主な対象にしています。SOMEQUIPが基盤とするPart 3(産業用機械)は、その中でも現場で最も出会う機会が多い区分です。
1.1 Part 3が対象とする設備
Part 3の対象は、定格出力15kW超、回転数120〜30,000rpmの範囲にある一般産業機械です。具体的には次のような設備が含まれます。
| 対象設備 | 具体例 |
|---|---|
| 電動機(可撓性カップリング使用時) | モーター全般 |
| ターボコンプレッサ | 圧縮空気設備 |
| ファン・ブロワ | 300kW超または剛支持のもの |
| 遠心分離機 | 分離・脱水工程の設備 |
| ポンプ | 遠心式・渦巻式など |
| ギア装置付き機械 | ※ギア自体の精密評価は別区分 |
これらは中小製造業の現場で最も台数が多い設備群であり、SOMEQUIPが最初にカバーすべき範囲として設計されています。
1.2 別の区分(Part)が対象となる設備
ISO 20816シリーズには、Part 3以外にも対象機械ごとの区分があります。以下はPart 3の対象外で、規格上は別の基準が適用される設備です。
| 設備 | 適用される区分 |
|---|---|
| 大型蒸気タービン・ガスタービン・発電機(40MW超) | 別区分 |
| 産業用ガスタービンセット(3MW超) | 別区分 |
| 水力発電機・揚水発電(60〜1000rpm) | 別区分 |
| 往復動機械(ガスエンジンなど) | 別区分 |
| 往復動圧縮機(レシプロ、120〜1800rpm) | 別区分 |
| ターボポンプ(プロセスポンプ) | 別区分 |
これらの設備は、ISO 20816の中でもPart 3とは異なる評価ロジック・閾値を使うため、SOMEQUIPが採用している判定ロジックをそのまま当てはめることができません(規格の全体像はISO 20816とは?──回転機械の振動診断に使う国際規格の全体像を参照)。
2. SOMEQUIPで診断できる設備の具体例
規格上の対象範囲に加えて、スマホでの計測が現実的かという観点も含めると、SOMEQUIPが得意とするのは次のような設備です。
✅ 診断に向いている設備
- 一般的な遠心ポンプ(給水ポンプ・冷却水ポンプなど)
- 汎用モーター・減速機付きモーター
- ファン・ブロワ(送風機、換気設備)
- 小〜中型のコンプレッサー(ターボ式)
- 遠心分離機
これらはPart 3が対象とし、かつ後述する周波数帯域の制約にも収まりやすい設備です。日常の巡回点検・定期計測でのスクリーニング用途に適しています。
3. 対象外・注意が必要な設備
3.1 規格上そもそも対象外の設備
大型タービン・発電機、ガスタービン、水力発電機、往復動機械(レシプロエンジン)、レシプロ圧縮機は、Part 3の評価ロジックの対象外です。これらの設備を保有している場合、SOMEQUIPのISO 20816判定をそのまま当てはめても、規格上の正しい評価にはなりません。
こうした設備は多くの場合、専門の振動診断業者や設備メーカーによる個別評価が前提になっている大型・特殊設備です。Zone判定による合否判断が必要な場面では、心当たりがある場合は結果を鵜呑みにせず、専門家に相談してください。
ただし、後述する「その他設備」タグを使えば、規格の合否判定なしで測定・記録の道具として使うことはできます。
3.2 スマホセンサーならではの限界
規格の対象範囲に入っていても、スマートフォンの加速度センサーには専用振動計にはない制約があります。
周波数帯域の制約
iPhoneの加速度センサーが実用的に計測できる帯域は、目安としておよそ50Hzまでです。一方、専用振動計は数百〜数千Hzまで計測できます。この差により、以下の診断には対応が難しい場合があります。
| 診断内容 | 理由 |
|---|---|
| ベアリングの高周波数欠陥 | 数百Hz以上に現れる特徴周波数を捉えられない |
| 高速回転機械の詳細分析(3,000rpm以上) | 高次成分が帯域外に出やすい |
| 歯車欠陥の精密診断 | 噛み合い周波数が高帯域に出ることが多い |
低速回転・超大型設備
Part 3の対象は回転数120rpm以上が前提です。これを下回る極端に低速な設備(大型の攪拌機など)は、規格の想定する評価ロジックの前提から外れ、正確な判定が難しくなります。
3.3 規格対象外でも使う方法:「その他設備」タグ
SOMEQUIPには、設備タグとして「その他設備」を選ぶと、ISO規格の閾値判定を使わずに測定値だけを記録できる仕組みがあります。このタグを選ぶとZone判定(A〜D)は表示されませんが、加速度・速度RMS・変位RMSといった生の数値とスペクトルグラフはそのまま確認できます。
Part 3の対象外設備(大型タービンや往復動機械など)や、判定基準に自信が持てない設備であっても、「その他設備」タグを使えば「規格に基づく合否判定」ではなく「値を記録して見比べる」という使い方ができます。
ただし、SOMEQUIP単体には過去の測定値と自動で比較するトレンド機能はありません。計測のたびにPDFレポートを出力し、前回の値と手動で見比べる運用になります。継続的な変化を自動で検知したい場合は、保全管理SaaSのSomeraと組み合わせる方法もあります。
4. 迷ったときの判断基準
「うちの設備はどっちだろう」と迷ったときは、次の順番で確認してください。
Step 1:設備の種類を確認する
ポンプ・モーター・ファン・コンプレッサー・遠心分離機であれば、まず対象内と考えて問題ありません。タービン・発電機・往復動機械(レシプロ式)であれば対象外の可能性が高く、専門家への相談を検討してください。
Step 2:出力・回転数を確認する
銘板を確認し、定格出力15kW超・回転数120〜30,000rpmの範囲にあるかを確認します。この範囲を大きく外れる設備は、Part 3の想定から外れている可能性があります。
Step 3:知りたいことのレベルを確認する
「大きな異常の兆候を早期に見つけたい」というスクリーニング目的であれば、SOMEQUIPは適しています。「規格の対象外だが、とにかく値を記録して変化を追いたい」という場合は、「その他設備」タグでの記録用途が使えます。一方、「ベアリングのどの部分が壊れているか」「歯車のどの歯が摩耗しているか」といった精密診断が目的なら、専用振動計と専門家による解析が必要です。
配管そのものの振動が気になる場合は、SOMEQUIPではなくSOMPIPE(SwRI基準)の対象です。設備本体と配管では見るべき基準が異なります(詳しくはSOMPIPEとSOMEQUIPの使い分けを参照)。
まとめ
SOMEQUIPが対象とするのは、ISO 20816 Part 3が定める一般産業機械(ポンプ・モーター・ファン・コンプレッサーなど、出力15kW超・回転数120〜30,000rpm)です。大型タービンや往復動機械はそもそも規格上の対象外であり、スマホセンサー特有の周波数帯域の制約から、ベアリングや歯車の精密診断にはさらに限界があります。ただし対象外設備でも、「その他設備」タグを使えば規格判定なしの記録用途として使えます。
📌 この記事のポイント3つ
- SOMEQUIPが対象とするのはISO 20816 Part 3の範囲──一般的なポンプ・モーター・ファン・コンプレッサーが中心
- 大型タービン・往復動機械・レシプロ圧縮機など、Part 3の対象外設備にZone判定をそのまま当てはめることはできないが、「その他設備」タグで記録用途には使える
- 規格上は対象内でも、スマホセンサーの帯域(目安〜50Hz)ゆえにベアリング高周波欠陥・歯車精密診断は苦手
💡 明日から現場でできること
- 計測したい設備の銘板で出力(kW)と回転数(rpm)を確認する
- 設備の種類が対象内かを本記事の表で照らし合わせる
- 対象外設備は「その他設備」タグで記録し、PDFレポートを都度比較する運用を試す
- 「異常の早期発見」が目的か「精密な原因特定」が目的かを整理し、目的に合った手段を選ぶ
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