振動の話

片持ち梁配管の固有振動数を計算してみよう──バルブ・計器取付部のケース

Mon Jul 13

配管の固有振動数計算は「両端支持」の記事が中心になりがちですが、バルブや計器の取付部は片持ち梁(片端固定・他端自由)でモデル化する場面が多くあります。配管枝管と山形鋼の計器スタンド、2つのケースで実際に計算してみましょう。


はじめに

固有振動数を自分で計算してみようでは、配管を「両端支持梁」としてモデル化する計算例を扱いました。しかし現場には、一端だけが固定され、もう一端が自由に動く「片持ち梁」でモデル化すべき箇所も多くあります。計装用の分岐配管、バルブスタンド、計器を載せる架台などです。

vibration7の4.5節では片持ち梁の係数だけを1行で紹介しましたが、この記事では「なぜ片持ち梁で考える必要があるのか」から、配管枝管・山形鋼の計器スタンドという2つの実例でのフル計算手順まで、じっくり深掘りします。

この記事は、バルブ・計器まわりの配管や架台の振動が気になる保全担当者・設計者の方に向けて書かれています。

💡 この記事で得られること

  • 片持ち梁の固有振動数を、配管・山形鋼それぞれで計算する手順
  • 短い片持ち梁が「高い周波数」になりやすい理由(片持ちという条件ではなく、スパンの短さが効いている)
  • 山形鋼のような非対称断面で必要になる「強軸・弱軸」という考え方と、実際の取付では荷重がどちらの軸ともズレるという注意点

1. なぜ片持ち梁を扱うのか

配管系の中には、両端がサポートで支えられている主配管だけでなく、そこから枝分かれした短い配管や、独立して立てられた架台が数多くあります。

  • バルブ取付部の分岐配管:主配管からドレン・ベント・サンプリング用に短く枝分かれした小口径配管
  • 計器取付ノズル:圧力計・温度計を取り付けるための短い突起配管
  • 計器スタンド:伝送器や表示計器を、配管とは別に架台(山形鋼など)で立てて設置する構造物

これらはいずれも「一端は主配管や床・壁にしっかり固定され、もう一端(計器や配管末端)は自由に動ける」という構造で、片持ち梁としてモデル化するのが適切です。前回の記事(ポンプ・ファン・コンプレッサー、振動の見方は設備種別でどう変わる?)で扱ったベーン通過周波数・ブレード通過周波数のような高い周波数の励振源は、実はこうした短い片持ち構造物と相性が悪い(=共振しやすい)ことがあります。理由(片持ちという条件そのものではなく、スパンが短いことが効いています)は4節で詳しく説明します。


2. 片持ち梁の固有振動数の計算式(おさらい)

固有振動数を自分で計算してみようの2.3節で紹介した通り、片持ち梁の固有振動数は次の式で計算できます。

fn = 0.56 / L² × √(EI / m)  [Hz]
  • fn:固有振動数 [Hz]
  • L:スパン長さ(固定端から自由端までの長さ)[m]
  • E:ヤング率 [Pa]
  • I:断面二次モーメント [m⁴]
  • m:単位長さあたりの質量 [kg/m]

両端支持梁の式(fn = 1.57 / L² × √(EI/m))と係数だけが違い、片持ち梁は同じ長さなら両端支持の約1/3の固有振動数になります。この係数の違いは、自由端があることで梁全体の曲げ剛性が実質的に下がるためです。


3. 配管枝管のケース:実際に計算してみよう

vibration7の計算例と同じ配管諸元を使い、支持条件だけを「両端支持」から「片持ち」に変えて計算してみます。同じ数値の続きとして理解しやすくするため、あえて配管サイズは変えていません。

3.1 計算条件

項目
配管材質炭素鋼(STPG)
呼び径・外径(D)100A、114.3mm
流体水(満液)
支持条件片持ち(計器取付ノズルを想定)
スパン長さ(L)0.6m

断面二次モーメント(I = 3.01×10⁻⁶ m⁴)と単位長さあたりの質量(m = 24.3 kg/m)は、vibration7の計算例(Step1〜3)とまったく同じ値を使います。

3.2 固有振動数の計算

fn = 0.56 / 0.6² × √((206×10⁹ × 3.01×10⁻⁶) / 24.3)
   = 0.56 / 0.36 × 159.8
   = 1.556 × 159.8
   ≈ 248.5 Hz

vibration7の両端支持・L=3.0mの例(27.9Hz)と比べると248.5Hzは約9倍ですが、この差は「支持条件(両端支持→片持ち)」と「スパン長さ(3.0m→0.6m)」という2つの変化が混ざった結果です。それぞれが単独でどれだけ効いているかは、次の4節で分解して確認します。


4. 短い片持ち梁は「高い周波数」になりやすい理由

3節の例(片持ち・L=0.6m・248.5Hz)だけを見ると、「片持ち梁は主配管より高い周波数になる」ように見えます。しかし、これは片持ちという支持条件そのものの効果ではありません。支持条件の変化とスパンの変化、2つの要因が混ざっているので、切り分けて確認します。

4.1 支持条件だけを変えた場合(スパンは同じ)

同じスパン3.0mのまま、両端支持と片持ちだけを比較すると(配管諸元は3節と同じ)——

支持条件スパンLfn
両端支持(vibration7の例)3.0m27.9Hz
片持ち3.0m9.9Hz

支持条件を両端支持→片持ちに変えるだけなら、固有振動数は約1/2.8に下がります。自由端がある分、梁全体としての曲げ剛性が実質的に下がるためです(2節の係数比、1.57 / 0.56 ≈ 2.8とも一致)。

4.2 スパンだけを変えた場合(片持ちのまま)

片持ちのまま、スパンだけを3.0mから0.6m(1/5)に短縮すると——

スパンL支持条件fn
3.0m片持ち9.9Hz
0.6m片持ち248.5Hz

スパンを1/5にすると、固有振動数は約25倍(= (3.0 / 0.6)²)に跳ね上がります。fn ∝ 1/L² の関係により、支持条件の変化(約2.8倍)よりひと桁大きい影響です。

つまり、計装配管・バルブ枝管が主配管より高い周波数になりやすいのは「片持ちだから」ではなく「実際のスパンが主配管よりずっと短いから」です。 仮に片持ち梁が主配管と同じ3.0mの長さだったとしたら、両端支持より低い周波数(9.9Hz)になります。

4.3 スパンを変えたときの感度(パラメータスタディ)

片持ちのまま、スパン長さをさらに細かく変えて固有振動数を計算すると、次のようになります(配管諸元は3節と同じ)。

スパン L [m]固有振動数 fn [Hz]
0.5357.8
0.6248.5
0.8139.8
1.089.5
1.539.8
3.0(参考:vibration7の両端支持例と同スパン)9.9
スパン長さと固有振動数の関係を示す対数軸グラフ。片持ち梁の配管枝管で、スパン0.5mでは357.8Hz、0.6mでは248.5Hz、0.8mでは139.8Hz、1.0mでは89.5Hz、1.5mでは39.8Hz、3.0mでは9.9Hzとなり、スパンが短いほど固有振動数が急激に高くなることを示す。vibration18で計算したベーン通過周波数・ブレード通過周波数の帯域(120〜175Hz)が、スパン0.6〜0.9m付近の固有振動数と重なる領域として帯状に示されている
スパン長さと固有振動数の関係を示す対数軸グラフ。片持ち梁の配管枝管で、スパン0.5mでは357.8Hz、0.6mでは248.5Hz、0.8mでは139.8Hz、1.0mでは89.5Hz、1.5mでは39.8Hz、3.0mでは9.9Hzとなり、スパンが短いほど固有振動数が急激に高くなることを示す。vibration18で計算したベーン通過周波数・ブレード通過周波数の帯域(120〜175Hz)が、スパン0.6〜0.9m付近の固有振動数と重なる領域として帯状に示されている

固有振動数はスパン長さの2乗に反比例するため、スパンが短いほど固有振動数は急激に高くなります。グラフの黄色い帯は、前回の記事で計算したベーン通過周波数・ブレード通過周波数(120〜175Hz)の帯域です。スパン0.6〜0.9m程度の片持ち枝管は、ちょうどこの帯域と重なる固有振動数になります。

つまり、短い片持ち構造物は、ポンプ・電動機の回転周波数(多くは数十Hz以下)とは共振しにくい一方、羽根の通過に由来する高い周波数の励振源と共振するリスクがあるということです。「片持ち=低周波数で危険」という単純化ではなく、実際のスパン長さで計算し、どの励振源と近いかを個別に確認する必要があります。


5. 断面が非対称だとどう変わるか──山形鋼の計器スタンドのケース

ここまでの配管枝管は断面が円形で、どの方向に曲がっても同じ断面二次モーメント(I)を使えました。しかし、計器スタンドによく使われる山形鋼(等辺山形鋼、アングル材)は断面が左右非対称なため、曲がる方向によって断面二次モーメントの値が変わります。

5.1 強軸(Iu)と弱軸(Iv)という考え方

山形鋼のような非対称断面には、「最も曲げに強い方向(強軸 u-u、断面二次モーメントIuが最大)」と「最も曲げに弱い方向(弱軸 v-v、断面二次モーメントIvが最小)」という2つの基準軸(主軸)が存在します。等辺山形鋼の場合、強軸は2つの辺の間を通る対角線の方向、弱軸はそれと直角の方向になります。

等辺山形鋼(L-65×65×6)の断面図。L字型の断面に、図心を通る2本の主軸が描かれている。対角線方向の実線(青)が強軸u-uで曲げに強い方向、それと直角の破線(オレンジ)が弱軸v-vで曲げに弱い方向であることを示す。右下の小さな囲みには、実際の取付(脚を水平・鉛直に向ける)での鉛直荷重(計器の自重)の向きと、それによる実際のたわみ方向(赤破線)が示されており、鉛直荷重が強軸・弱軸のどちらとも一致せず、横方向にも約59%連成してたわむことを表している
等辺山形鋼(L-65×65×6)の断面図。L字型の断面に、図心を通る2本の主軸が描かれている。対角線方向の実線(青)が強軸u-uで曲げに強い方向、それと直角の破線(オレンジ)が弱軸v-vで曲げに弱い方向であることを示す。右下の小さな囲みには、実際の取付(脚を水平・鉛直に向ける)での鉛直荷重(計器の自重)の向きと、それによる実際のたわみ方向(赤破線)が示されており、鉛直荷重が強軸・弱軸のどちらとも一致せず、横方向にも約59%連成してたわむことを表している

例えば脚長65mm×厚み6mmの等辺山形鋼(L-65×65×6)の場合、断面の形状(脚の長さ・厚み・重なり部分)から断面二次モーメントを計算すると、強軸Iu ≈ 4.78×10⁻⁷ m⁴、弱軸Iv ≈ 1.22×10⁻⁷ m⁴となり、強軸は弱軸の約3.9倍の値になります。

5.2 実際の設置だと、荷重は主軸と一致しない

強軸・弱軸で計算できるのは、あくまで「その軸の方向に荷重がかかったとき」の話です。しかし実際の計器スタンドは、山形鋼の片方の脚を水平に、もう片方を鉛直に向けて(壁や架台に脚の片面を合わせて)取り付けるのが一般的です。この向きで計器を載せると、荷重(計器の自重)は真下=鉛直方向にかかります。

図の通り、強軸・弱軸は脚の方向から45°回転した対角線上にあるため、鉛直方向の荷重は、強軸にも弱軸にもちょうど45°ずれた向きになります。断面が左右非対称なために、この「ずれた荷重」は単純に縦方向だけのたわみを生まず、横方向にも連成してたわみます。L-65×65×6の例で計算すると、横方向のたわみは縦方向のたわみの約59%にもなります。まっすぐ下向きに荷重をかけているのに、架台は斜めにたわむということです。

この連成を踏まえると、鉛直方向のたわみに対する「実効的な断面二次モーメント」は次の式で計算できます。

I* = (Ix・Iy − Ixy²) / Ix
  • Ix、Iy:脚の方向(水平・鉛直)に沿った断面二次モーメント(等辺山形鋼ではIx = Iy)
  • Ixy:断面二次極モーメント(脚の方向を基準にした非対称性の指標)

L-65×65×6の場合、I* ≈ 1.94×10⁻⁷ m⁴ となり、弱軸Iv(1.22×10⁻⁷ m⁴)と、非対称性を無視した単純な値Ix(3.00×10⁻⁷ m⁴)の中間、やや弱軸寄りの値になります。

実務では、この連成計算までフルに行うのは手間がかかります。簡易スクリーニングとしては、弱軸Ivを使うと実際より低め(安全側)に、Ixをそのまま使うと実際より高め(危険側)に評価がずれることを理解した上で、弱軸Ivを使う方が無難です。

5.3 計器の自重が加わると計算式が変わる

配管枝管では「配管自体の分布質量(単位長さあたりmkg/m)」を使いましたが、計器スタンドの多くは、架台自体の重さよりも、先端に載せる計器(伝送器・表示器など)の重さの方が支配的です。このように自由端に集中した質量がある場合、片持ち梁の固有振動数は次の式で近似できます。

fn = 1 / (2π) × √(3EI / (L³ × M))  [Hz]
  • M:自由端に取り付けた集中質量 [kg]

この式は、架台自体の質量を無視して「軽い架台の先に重い計器が乗っている」状態を想定したものです。架台自体の質量も無視できない場合は、架台の質量のうち約23.6%(教科書的な近似値)を先端の集中質量に加算する「等価質量」の考え方で精度を上げられます。

M_eff = M + 0.236 × m × L

5.4 実際に計算してみよう:L-65×65×6・計器4kgのケース

項目
山形鋼L-65×65×6(脚長65mm×厚み6mm、実際の取付=脚を水平・鉛直に向ける)
スパン長さ(L)0.4m
架台自体の質量(m)5.84 kg/m
計器の質量(M)4.0 kg

断面二次モーメントの選び方によって、結果がどう変わるかを比較します。

断面二次モーメントの選び方架台単体のfn(分布質量のみ)計器4kg搭載時のfn(集中質量のみ)
弱軸Ivのみ(簡易・安全側)229.5Hz86.4Hz
鉛直荷重の実効I*(5.2節、連成を考慮)289.8Hz109.0Hz
非対称性を無視してIx=Iyのまま計算(NG例)359.9Hz135.4Hz

集中質量の式に弱軸Ivを当てはめると、次の通りです。

fn = 1 / (2π) × √((3 × 206×10⁹ × 1.22×10⁻⁷) / (0.4³ × 4.0))
   ≈ 86.4 Hz

架台自体の質量も等価質量として加味すると(M_eff = 4.0 + 0.236 × 5.84 × 0.4 ≈ 4.55kg)、固有振動数は約81.0Hz(実効I*を使った場合は約102.2Hz)とやや下がります。いずれの断面二次モーメントを使っても、計器を載せる前(229〜360Hz台)と比べて振動数が3分の1〜半分程度まで下がる点が重要です。これは保温材ありの配管、固有振動数はどれだけ下がる?で扱った「質量付加効果」と同じ考え方で、先端に重いものを載せるほど固有振動数は下がります。

弱軸Ivを使った簡易評価(86.4Hz)は、連成を考慮した実効値(109.0Hz)より低めに出るため、共振リスクを見逃さないという意味で安全側の評価になります。逆に非対称性を無視してIxをそのまま使うと(135.4Hz)、実際より高い(危険な方向に外れた)評価になってしまいます。


6. よくある誤解と注意点

誤解1:片持ち梁は自由端があるから、どんな場合でも両端支持より危険(共振しやすい) → 正解:同じ長さで比較すれば片持ち梁の固有振動数は低くなりますが、実際の片持ち構造物(計器取付ノズル・計器スタンド)は主配管よりずっと短いスパンで使われることが多く、結果的に固有振動数はむしろ高くなります。「片持ち=低周波数で危険」という単純化ではなく、実際のスパン長さで計算する必要があります。

誤解2:山形鋼のような形鋼も、配管と同じように1つの断面二次モーメントで計算できる → 正解:円形断面の配管と違い、山形鋼のような非対称断面には強軸(Iu)と弱軸(Iv)という2つの値があります。簡易評価では安全側の弱軸Ivを使うのが実務的ですが、Ix(脚の方向に沿った値)をそのまま非対称性を無視して使うと、実際より高め(危険な方向)の評価になってしまいます。

誤解3:計器の自重は鉛直にかかるのだから、弱軸(Iv)方向に曲がると考えればよい → 正解:実際の取付(山形鋼の脚を水平・鉛直に向ける取付方)では、鉛直方向の荷重は強軸にも弱軸にも一致せず、ちょうど45°ずれた向きになります。そのため鉛直方向の荷重でも横方向に連成してたわみます(5.2節)。弱軸Ivを使うのは「弱軸方向に荷重がかかっている」という意味ではなく、あくまで安全側に見積もるための簡易近似です。


まとめ

片持ち梁は、配管枝管でも山形鋼の計器スタンドでも、両端支持とは異なる考え方で固有振動数を評価する必要があります。特に「スパンが短いほど高周波数になる(支持条件ではなくスパンの効果)」「非対称断面では鉛直荷重が主軸とズレて横に連成してたわむ」という2点は、見落とされがちな実務上のポイントです。

📌 この記事のポイント3つ

  1. 片持ち梁の固有振動数は同じ長さなら両端支持の約1/3だが、実際のスパンが短いため結果的に高周波数になりやすい
  2. 山形鋼のような非対称断面は、実際の取付(脚を水平・鉛直に向ける)だと鉛直荷重が主軸とズレるため、横方向にも連成してたわむ。簡易評価では弱軸Ivを使うのが安全側
  3. 先端に計器などの集中質量が乗ると、固有振動数は大きく下がる(質量付加効果と同じ考え方)

💡 明日から現場でできること

  • 計器取付ノズル・バルブスタンドのスパン長さを実測し、片持ち梁の式で概算する
  • 計器スタンドが山形鋼など非対称断面の場合、簡易評価では弱軸Ivを使う(Ixをそのまま使わない)
  • 先端に重い計器を追加する予定があれば、追加前に固有振動数への影響を概算する

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