振動の話

ポンプ・ファン・コンプレッサー、振動の見方は設備種別でどう変わる?

Mon Jul 13

ポンプ・ファン・コンプレッサーは、どれも「回転する設備」に見えて振動の発生メカニズムがまったく異なります。設備種別ごとの振動特徴と測定ポイント、FFT解析でまず疑うべき周波数を整理しました。


はじめに

「ポンプの振動を測るとき、どこにセンサーを付ければいいんだろう」「ファンとポンプで、振動の見方は同じでいいのだろうか」──振動測定の基本を覚えても、対象設備が変わると迷いが出ることは少なくありません。

実は、ポンプ・ファン・コンプレッサーは、同じ「回転機械」というくくりで語られがちですが、内部構造や振動の発生メカニズムはそれぞれ異なります。構造の違いを理解しておくと、FFTスペクトルに現れたピークが何を意味するのか、見当がつけやすくなります。

この記事は、複数種類の回転機械を担当していて、設備ごとの振動の見方の違いを整理しておきたい保全担当者の方に向けて書かれています。

💡 この記事で得られること

  • ポンプ・ファン・コンプレッサーで振動の発生メカニズムがどう違うか
  • 設備種別ごとの推奨測定位置と、まず疑うべき周波数
  • キャビテーション・アンバランス・脈動など、症状ごとの見分け方の考え方

1. なぜ設備種別によって振動の見方が変わるのか

振動の発生要因は、大きく分けると「回転する部品の不釣り合いによるもの」と「流体・気体の圧力変動によるもの」の2系統があります。ポンプとファンは連続的に回転する羽根車・羽根が主な振動源であるのに対し、往復動コンプレッサーはピストンが直線的に往復する構造のため、回転機械とはまったく違う振動の型を示します。

身近な例で考えると、自転車のペダルと手動の空気入れの違いに近いものです。 ペダルを漕ぐ動きは滑らかな回転運動で、力の変化も比較的なだらかです。一方、手動の空気入れは押す・引くの往復運動で、押し込む瞬間に力が集中します。ポンプ・ファンの振動が「回転数に応じた周期的な揺れ」を基本とするのに対し、往復動コンプレッサーの振動は「一往復ごとに力が加わる、脈動的な揺れ」が基本になるのは、この動き方の違いによるものです。

さらに、同じ「回転する羽根車」を持つポンプとファンでも、流体が液体か気体かによって、羽根が発生させる圧力変動の性質が変わります。液体は気体よりも密度が高く圧縮されにくいため、ポンプでは羽根がケーシングの舌部(渦巻き形状の出口部分)を通過する瞬間に鋭い圧力脈動が生じやすく、条件によってはキャビテーション(気泡の発生と崩壊)という液体特有の現象も加わります。ファンが扱う気体ではこうした液体特有の現象は起きない一方、羽根への粉塵付着によるアンバランスなど、気体特有の運用課題が振動特徴に影響します。

こうした構造・流体の違いを踏まえたうえで、設備種別ごとの振動特徴を見ていきます。


2. ポンプの振動特徴と測定ポイント

2.1 測定ポイント

ポンプの振動測定は、**軸受ハウジング(ベアリングハウジング)**で行うのが基本です。駆動側・反駆動側の両方を、水平・垂直・軸方向の3方向で測定します。振動源に最も近い場所で測定するという振動測定の基本原則(詳しくは振動測定の基本)が、ポンプでも当てはまります。

2.2 まず疑うべき周波数

周波数成分主な原因現れ方の特徴
1X(回転周波数)アンバランス(羽根車の重心ズレ)1Xだけが突出して高い
2X(回転周波数の2倍)ミスアライメント(軸心のズレ)1Xに加えて2Xも高い
ベーン通過周波数(VPF)羽根がケーシング舌部を通過する際の圧力脈動回転周波数×羽根枚数の位置に明瞭なピーク
広帯域の高周波成分キャビテーション特定のピークではなく、広い周波数帯でノイズ状に振幅が上昇

ベーン通過周波数は「回転数[rpm] ÷ 60 × 羽根枚数」で計算できます。仮に、羽根枚数6枚のポンプが1,750rpmで運転されているとしましょう。ベーン通過周波数は 1,750 ÷ 60 × 6 ≈ 175Hz と計算できます。FFTスペクトルの175Hz付近に明瞭なピークがあれば、羽根の通過に伴う正常な圧力脈動である可能性が高く、逆にそのピークがなく広い周波数帯でノイズ状に振幅が上がっている場合は、キャビテーションを疑う手がかりになります。

2.3 キャビテーションとベーン通過周波数の見分け方

キャビテーションは、ポンプ吸込側の圧力が液体の飽和蒸気圧を下回ったときに気泡が発生し、その気泡が高圧部で崩壊する現象です。「配管の中で砂利が流れているような音」と表現されることが多く、FFT上では特定の周波数に鋭いピークが立つのではなく、広い周波数帯にわたってノイズ状に振幅が底上げされる形で現れます。ベーン通過周波数のような「特定の周波数の明瞭なピーク」とは形が異なるため、両者は見分けが可能です。キャビテーションが疑われる場合、吸込配管の抵抗(フィルターの目詰まり・バルブの絞りすぎ・吸込揚程の過大)を点検することが、振動そのものへの対策と同時に必要になります。

石油化学プラント向けの規格(API 610)では、ポンプの軸受ハウジングでの振動許容値として全周波数3.0mm/s rms程度の値が示されていますが、これは特定業界向けの数値であり、一般的な中小製造業の設備で使う許容値はISO 20816の考え方(振動の許容値はどう決める?)に沿って個別に設定するのが実務的です。


3. ファン・送風機の振動特徴と測定ポイント

3.1 測定ポイント

ファン・送風機は、ベアリング部とケーシングで測定します。インペラ(羽根車)側に近い位置も併せて測定すると、羽根まわりの異常を捉えやすくなります。

3.2 まず疑うべき周波数

ファンで最も多いトラブルの一つが、羽根への粉塵・付着物によるアンバランスです。回転体の重心がずれることで1Xのピークが正常時の2〜3倍程度に増加します(このパターンの詳細はFFTグラフの読み方で解説しています)。もう一つ、ポンプと同様に羽根の通過に由来する周波数成分がありますが、ファンの場合は流体が気体であるため「ブレード通過周波数」と呼び分けます。計算式の考え方自体はベーン通過周波数と共通(回転数[rpm] ÷ 60 × 羽根枚数)ですが、発生要因は気体の流れがケーシング内の構造物を通過する際の励振力であり、液体の圧力脈動とは性質が異なります(用語の違いは似ているけど実は別物で詳しく整理しています)。仮に、羽根枚数6枚のファンが1,200rpmで運転されているとすると、ブレード通過周波数は 1,200 ÷ 60 × 6 = 120Hz です。

3.3 ベルト駆動ファン特有の注意点

ファンには、モーターの回転を直結せずベルト・プーリーで伝達する「ベルト駆動」方式が多く使われます。この場合、モーターとファンの回転数が異なるため、FFTスペクトル上にモーター側の1Xとファン側の1Xという、2つの異なる回転周波数成分が現れます。さらに、ベルト自体の周回に起因する「ベルト周波数」という第三の成分も加わります。

よくあるのが、こんなケースです。 ベルト駆動ファンで振動が大きくなり、「回転周波数」を1つだけ計算して原因を探したが、どのピークとも一致せず原因不明のまま時間だけが過ぎてしまう──というケースです。ベルト駆動である以上、モーター側・ファン側という2つの回転周波数と、ベルト周波数の合計3種類の周期的な成分が存在することを前提に、それぞれのピークがどの成分に対応するかを切り分ける必要があります。ベルトの張力不足や摩耗はベルト周波数付近の振動として現れやすいため、回転周波数のズレが大きい場合はまずベルトの状態を点検します。


4. コンプレッサー(往復動)の振動特徴と測定ポイント

4.1 測定ポイント

往復動コンプレッサーは、ポンプ・ファンとは測定ポイントの考え方自体が異なります。シリンダー・クランクケース・距離片(ディスタンスピース)といった本体各部に加え、圧力脈動を抑える脈動ボトルのノズル近傍、主要な配管スパンも測定対象になります。ポンプ・ファンが「軸受」中心なのに対し、往復動コンプレッサーは「本体各部+配管系統」まで含めて振動を評価する点が大きな違いです。

4.2 脈動由来の振動という考え方

往復動コンプレッサーの最大の特徴は、ピストンの往復運動によって生じる圧力脈動です。この脈動が配管系の固有振動数と一致すると、共振によって配管の疲労破壊や小口径配管の破損につながることがあります(配管の共振対策の考え方は固有振動数が共振しそうだとわかったらを参照してください)。

主要な励振周波数は「f_n = n ×(回転数[rpm] ÷ 60)」(nは1, 2, 3...の整数)で表され、回転数の整数倍のところに複数のピークが立つのが特徴です。仮に、回転数750rpmの往復動コンプレッサーの場合、基本周波数は750 ÷ 60 = 12.5Hzとなり、その2倍成分である25Hz付近にもピークが現れます(両行程で圧縮を行う構造のコンプレッサーでは、2倍成分が主要な振動として観測されることがあります)。ポンプ・ファンの「1Xが主役」という見方とは異なり、往復動コンプレッサーでは複数の倍調波を横並びで見る必要があります。

4.3 評価単位の違いに注意

石油化学プラント向けの規格(API 618)では、配管振動を速度の実効値(rms)ではなくピーク・ツー・ピーク値(振幅の山から谷までの幅)で評価する慣習があります。これはポンプの評価規格(API 610、rms評価)とは単位・評価軸が異なるため、異なる規格の数値を単純比較すると誤った判断につながります。自社設備の評価には、社内で統一した評価軸(多くの場合ISO 20816系のrms評価)を用いることをおすすめします。


5. 3設備に共通するチェックの型

ここまで見てきた3設備の特徴を、FFT解析での着眼点として整理すると、次のような型になります。

設備主な測定位置まず疑うべき周波数特有の注意点
ポンプ軸受ハウジング(駆動側・反駆動側)1X・2X・ベーン通過周波数キャビテーションは広帯域ノイズとして現れる
ファン・送風機ベアリング部・ケーシング・インペラ側1X・ブレード通過周波数ベルト駆動では回転周波数が2系統+ベルト周波数
往復動コンプレッサーシリンダー・クランクケース・配管スパン回転数の整数倍の複数ピーク評価単位(rms/peak-to-peak)が規格で異なる

いずれの設備でも、FFTスペクトルを読む基本の型は共通です。1Xが突出していればアンバランス、2Xも高ければミスアライメント、という判断の骨格(詳しくはFFTグラフの読み方)はそのまま使えます。そのうえで、「その設備固有の周波数成分(通過周波数・脈動周波数)は何か」「測定点はどこが適切か」という設備種別ごとの上乗せ知識を持つことで、原因の切り分けが速くなります。


6. よくある誤解と注意点

誤解1:どの設備も「回転数」さえ測れば振動の良し悪しを判断できる → 正解:回転数(1X)はアンバランスの手がかりにはなりますが、設備によって評価すべき成分は異なります。ポンプ・ファンでは通過周波数、往復動コンプレッサーでは回転数の整数倍の複数ピークまで見る必要があり、1Xだけを見て「正常」と判断するのは不十分です。

誤解2:どの規格の振動基準値でも、数値さえ比較すれば良し悪しが分かる → 正解:API 610はrms評価、API 618は配管でピーク・ツー・ピーク評価というように、規格ごとに測定単位・評価軸が異なります。異なる規格の数値をそのまま比較すると、実際には問題がないのに「危険」と誤判定したり、その逆が起きたりします。自社設備では評価軸を統一し、継続的に同じ条件で傾向管理することが実務的です。


まとめ

ポンプ・ファン・コンプレッサーは同じ「回転機械」でも、構造と流体の違いから振動の発生メカニズムが異なります。測定ポイントとFFTでまず疑うべき周波数を設備種別ごとに押さえておくことで、原因の切り分けが速くなります。

📌 この記事のポイント3つ

  1. ポンプ・ファンは通過周波数、往復動コンプレッサーは回転数の整数倍の複数ピークが特徴
  2. キャビテーションは特定の周波数ではなく広帯域のノイズとして現れる
  3. ベルト駆動ファンは回転周波数が2系統+ベルト周波数の3種類存在する

💡 明日から現場でできること

  • 測定対象がポンプ・ファン・コンプレッサーのどれかを確認し、測定ポイントを設備別ガイドに合わせる
  • FFTスペクトルで1X以外のピークが立っていたら、通過周波数・脈動周波数の可能性をまず確認する
  • ベルト駆動設備は、モーター側・ファン側2つの回転周波数を区別して記録する

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