振動の話

サポートを何本追加すれば共振を避けられる?──本数別・感度シリーズ

Mon Jun 22

配管にサポートを1本追加すると、固有振動数は2倍ではなく4倍になります。本記事では、サポート本数と固有振動数の関係を計算式で示し、「何本追加すれば共振を避けられるか」をポンプの励振周波数を例に具体的に判定します。

はじめに

「固有振動数を自分で計算してみよう」の5.4節では、6.0mのスパンに中央サポートを1本追加して3.0m×2スパンにすると、固有振動数が大きく上がる例を示しました。しかし、この例は「1本追加したらどうなるか」の1パターンにとどまっていました。

「2本追加したら?」「3本では?」「そもそも何本追加すれば共振を回避できるのか?」——現場でサポート追加を検討するとき、本当に知りたいのはこの「本数」の判断基準です。

本記事では、サポート本数と固有振動数の関係を一般化した式で示し、実際のポンプの励振周波数を例に「何本必要か」を具体的に判定します。

💡 この記事で得られること

  • サポート本数を増やすと固有振動数がどう変化するかの計算式
  • 励振周波数に対して「何本必要か」を判定する具体的な方法
  • 「1本追加すれば安全」とは限らない実例とその理由

1. サポート本数と固有振動数の関係──n²の法則

vibration7で紹介した両端支持梁の固有振動数の基本式を振り返ります。

fn = C / L² × √(EI / m)

ここで、サポートが一定間隔で配置されている配管全体の長さを L_total とし、これを n 本の等しいスパンに分割するとします(つまり、内部に n−1 本のサポートを追加することになります)。各スパンの長さは L_total / n です。

これを基本式に代入すると:

fn(n) = C / (L_total / n)² × √(EI / m)
      = C × n² / L_total² × √(EI / m)
      = fn(1) × n²

つまり、サポート本数を増やしてスパンを n 分割すると、固有振動数は n² 倍になります。スパンを2分割(サポート1本追加)すれば固有振動数は4倍、3分割(2本追加)すれば9倍です。「本数を増やした分だけ比例して上がる」という直感よりも、はるかに効果が大きいということです。

⚠️ この式は、各スパンが独立した「両端単純支持梁」として振動すると仮定した簡易モデルです。実際の配管は複数のスパンがつながった連続梁であり、この前提による誤差については4節で解説します。

サポート本数とスパン分割の関係を示す図。全長9.0mの配管をn=1(無分割)・n=2(+1本)・n=3(+2本)に分割した場合のスパン長と固有振動数fnを比較
サポート本数とスパン分割の関係を示す図。全長9.0mの配管をn=1(無分割)・n=2(+1本)・n=3(+2本)に分割した場合のスパン長と固有振動数fnを比較

2. 実際に計算してみよう:本数別感度表

vibration7の例題と同じ配管仕様(100A・炭素鋼・Sch40・水満液、EI = 620,060 N·m²、m = 24.3 kg/m)を使い、サポート間が広く空いている全長9.0mの配管を例に計算します。

分割数 n追加サポート本数各スパン長fn [Hz]
1(無分割)0本9.0m31.1
2+1本4.5m124.3
3+2本3.0m279.8
4+3本2.25m497.4
5+4本1.8m777.3
6+5本1.5m1119.2

n=3(3.0mスパン)の値が279.8Hzになっている点に注目してください。これはvibration7の例題(スパン3.0mで fn ≈ 280Hz)とまったく同じ計算結果です。本数を分割して得られる各スパンは、結局vibration7で計算した「単一スパンの配管」と同じ式で評価していることが確認できます。

n=1→2で+93.2Hz、n=2→3で+155.5Hz、n=3→4で+217.6Hz——本数を増やすほど、1本あたりの上昇幅も大きくなっていきます。これがn²則の効果です。

3. 励振周波数ごとに「何本必要か」を判定する

3.1 励振周波数とベーン通過周波数とは

配管が共振するかどうかは、固有振動数だけでは決まりません。もう一つの主役が「励振周波数」——配管を実際に振動させる、周辺機器側の周波数です。

ポンプやモーターは、運転中にいくつかの特徴的な周波数で振動・圧力脈動を発生させます。代表的なものが次の2つです。

① 回転1次成分(1×成分)

モータ・ポンプの回転数そのものに対応する周波数です。軸にわずかな質量の偏り(アンバランス)があると、1回転につき1回、配管に力が加わります。

f = 回転数 [rpm] / 60 [Hz]

② ベーン通過周波数(VPF:Vane Pass Frequency)

ポンプの羽根車(インペラ)の羽根(ベーン)が、ケーシングの舌部(渦巻き形状の出口部分)を通過するたびに圧力脈動が発生します。羽根の枚数分だけ、1回転中に繰り返し発生する振動です。

f = 回転数 [rpm] / 60 × ベーン枚数 [Hz]

例えば1800rpmで回転する5枚羽根のポンプなら、1次成分は30Hz、ベーン通過周波数は150Hz——同じポンプから、まったく違う2つの周波数が同時に発生していることになります。励振周波数の特定方法の詳細はvibration7の5.1節でも解説しています。

3.2 判定基準のおさらい

vibration7で紹介したAPI 618準拠の分離度判定を使います。

|fn - f_excitation| / f_excitation ≥ 0.2 → OK(共振リスクなし)
|fn - f_excitation| / f_excitation < 0.2 → NG(共振リスクあり、危険域)

励振周波数 f の ±20% の範囲(0.8f 〜 1.2f)が「危険域」です。

3.3 実例で判定する

2節の表(全長9.0m、n=1〜3)を使い、3つのケースを判定します。

ケース1:低速ポンプ(900rpm・8極モータ、60Hz電源地域)

f = 900 / 60 = 15Hz、危険域は12〜18Hz。

nfn [Hz]判定
131.1OK(危険域から大きく外れている)

→ サポート追加は不要です。

ケース2:一般的なポンプ(1800rpm・4極モータ)の1次成分

f = 1800 / 60 = 30Hz、危険域は24〜36Hz。

nfn [Hz]判定
131.1NG(危険域内、分離度3.7%)
2124.3OK(分離度314%)

→ サポートを1本追加(n=2)すれば、1次成分との共振は解消します。

ケース3:同じポンプ(5枚羽根)のベーン通過周波数

f = (1800 / 60) × 5 = 150Hz、危険域は120〜180Hz。

nfn [Hz]判定
131.1OK(分離度79%)
2124.3NG(危険域内、分離度17.1%)
3279.8OK(分離度86.5%)

→ ケース2だけを見て「1本追加で解決」と判断すると、ベーン通過周波数で新たな共振を作ってしまいます。このポンプの配管では、1次成分とベーン通過周波数の両方をクリアするために、サポートを2本追加(n=3)する必要があります。

まとめ:3ケースの判定結果

励振源周波数危険域n=1n=2n=3
低速ポンプ1次成分15Hz12-18HzOK
一般ポンプ1次成分30Hz24-36HzNGOK
同ポンプVPF(5枚羽根)150Hz120-180HzOKNGOK
励振周波数の危険域とn別fnの関係を対数軸で示すグラフ。n=1は一般ポンプ1×(24-36Hz)の危険域に、n=2はベーン通過周波数(120-180Hz)の危険域に入り、両方を外れるのはn=3であることを示す
励振周波数の危険域とn別fnの関係を対数軸で示すグラフ。n=1は一般ポンプ1×(24-36Hz)の危険域に、n=2はベーン通過周波数(120-180Hz)の危険域に入り、両方を外れるのはn=3であることを示す

1つの励振源だけを見て「本数」を決めてはいけません。 1次成分だけクリアしても、ベーン通過周波数や他の高調波で新たな危険域に入り直すことがあります。

4. 本数を増やす際の注意点

4.1 独立スパンモデルと連続梁の違い

1節の計算は、分割した各スパンが「独立した両端単純支持梁」として振動するという簡易モデルに基づいています。しかし実際の配管は、複数のスパンが連続してつながった「連続梁」です。

連続梁では、内部の支持点でスパン同士が完全に分離しているわけではなく、隣接スパンからの回転拘束(連続性による剛性の上乗せ)が働きます。この影響により、実際の固有振動数は独立スパンモデルの計算値よりもやや高くなる傾向があります。差は数%程度から、支持条件によっては20%近くになることもあり、vibration8で紹介した「計算値と実測値のずれ」の一因になります。

簡易モデルは「危険域に入っていないか」のスクリーニングとしては十分実用的ですが、計算値が危険域のすぐ近くにある場合は、実測による確認(vibration8参照)を推奨します。

4.2 等間隔分割という前提

本記事の計算は「全長を n 等分する」前提で行っています。しかし実際の配管では、既存のバルブ・分岐・架構の位置によってサポートを等間隔に配置できないケースが多くあります。

スパン長が不均一な場合、各スパンの固有振動数も均一にはなりません。最も長いスパンが全体の固有振動数を支配するため、実際の配置で再計算することが必要です。本記事の表は「均等配置ならこうなる」という目安として使ってください。

4.3 複数モードの存在

複数スパンの配管には、本記事で扱った「最も低い振動モード」以外にも、複数の振動モードが存在します。励振周波数の高調波(2次成分、3次成分など)が、本記事で扱っていない別のモードと共振するケースもあり得ます。共振トラブルが疑われる重要設備では、簡易計算だけでなくFEM解析や実測による確認を検討してください。

5. 現場での判断ライン・対策

5.1 励振周波数を網羅的にリストアップする

サポート本数を検討する前に、対象設備が発生させる励振周波数をすべて洗い出します。回転1次成分だけでなく、ベーン通過周波数(ポンプ)、シリンダー数に応じた周波数(往復動圧縮機)など、vibration7の5.1節を参考に網羅的に確認してください。

5.2 nを1から増やしながら、すべての励振周波数を再チェックする

本数を1つ増やすたびに、リストアップしたすべての励振周波数に対して分離度を確認します。ケース3で見た通り、1つの周波数をクリアした本数が別の周波数では危険域に入ることがあるため、「最初に安全になった本数」で判断を止めないことが重要です。

5.3 コストとのバランスを取る

サポート1本の追加には、材料費・施工費・場合によっては足場代がかかります。n²則により本数を増やす効果は大きいため、必要以上に本数を増やすのはコストの無駄になります。すべての励振周波数をクリアする最小本数を探すという考え方で検討してください。

5.4 最終確認は実測で

計算で「これで大丈夫」と判断した後も、vibration8で紹介したハンマリング試験や常時微動測定で実測値を確認することを推奨します。4.1節で触れた連続梁効果や、実際の支持条件の不確かさにより、計算値と実測値がずれることがあるためです。

6. まとめ

サポート本数を増やすと、固有振動数はn²則に従って大きく上昇します。ただし「何本で十分か」は、対象設備が発生させるすべての励振周波数(1次成分・ベーン通過周波数など)を確認しないと判断できません。

📌 この記事のポイント3つ

  1. サポートを追加すると、固有振動数はn²倍になる:1本追加(2分割)で4倍、2本追加(3分割)で9倍
  2. 1つの励振周波数だけを見て本数を決めてはいけない:1次成分をクリアしても、ベーン通過周波数など別の励振源で危険域に入り直すことがある
  3. 独立スパンモデルは簡易計算:連続梁としての挙動や不均等な支持間隔により、実際の固有振動数は計算値とずれることがある

💡 明日から現場でできること

  • サポート追加を検討する配管について、励振周波数(1次成分・ベーン通過周波数など)をすべてリストアップする
  • 本数を1から増やしながら、すべての励振周波数に対して分離度20%を満たすか確認する
  • 計算で決めた本数を、実測(ハンマリング試験等)で最終確認する

📐 基本の計算方法はこちら

固有振動数の基本式・励振周波数の特定方法は、こちらで詳しく解説しています。

👉 固有振動数を自分で計算してみよう:簡易式とExcel活用法

🧵 保温材の影響を計算するならこちら

サポート本数とは別の角度から固有振動数に影響する「保温材の質量」については、こちらで具体的に計算しています。

👉 保温材ありの配管、固有振動数はどれだけ下がる?──質量付加効果と「計算と実測のズレ」

🔧 計算値と実測値がずれる理由はこちら

連続梁効果や支持条件の不確かさなど、計算だけでは説明できないズレの要因と実測手法はこちらで解説しています。

👉 固有振動数は実測で確認できる──現場で使える測定手法とその選び方

⚖️ サポート追加以外の対策もまとめて比較するならこちら

本記事のサポート追加に加え、質量付加・剛性低下・回転数変更・減衰材の効果とリスクを、同じケースで計算して比較しています。

👉 固有振動数が共振しそうだとわかったら──対策ごとの効果を計算で比較する

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